開催まであと2年ほどに迫った2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会。ビジネス界では東京五輪前後を景気の節目と考えて奔走する経営者によく遭遇します。例えば、五輪前までは好景気ながら五輪後には確実に不況がやって来ると考え、事業拡大を抑える外食チェーン社長。周囲から舞い込む出店要請を丁寧に断って「五輪後は大不況が来る」と周囲に語っています。あるいは、五輪前に稼げるだけ稼ぐべきと開発を急ぐビジネスホテル社長。「ここで勝負をかけないでいつするの?」と言い切ります。いずれにしても五輪の経済効果が大きいと考えているからです。
しかし、東京五輪の前にも経済効果が大きなイベントが日本で行われます。それは第9回ラグビーワールドカップ。19年9月から11月にかけて、アジア初の開催となります。ワールドカップというとサッカーの印象が強いですが、ラグビーワールドカップも負けず劣らず人気のスポーツイベントで、前回大会は全世界で約40億人が大会を視聴。海外から開催地(前回はイングランド)に40万人以上が訪れ、日本円にして約3332億円の経済効果をもたらしました。こうした大きな経済効果が、19年には日本にもたらされる可能性が高いのです。
しかも、この経済効果は東京一極集中ではありません。東京五輪は開催期間が約2週間なのに対し、ラグビーワールドカップは約6週間と長く、しかも開催会場は全国12カ所と広域にわたります。ラグビーの強豪国である欧米各国やオーストラリアを中心に、今回も前回並みの40万人が訪日すると予想されていますが、全国各地の会場周辺では、宿泊施設の整備など新たなビジネスチャンスが生まれるはずです。理由は、訪日する外国人観光客=ラグビーファンは世帯年収が高い富裕層が多く、ハイクラスな日本の旅を望んでいるから。ちなみに日本でも、ラグビーのファン層はゴルフのファン層と近く、年齢や年収が高いという調査結果が出ています。前回大会では会場周辺の最高級ランクのホテル、しかもスイートルームを希望する観光客が多数いたため、急きょホテルの改修が行われたそうです。すでにインバウンド需要に対する対策は全国でも準備が進みつつありますが、ここまで多くの富裕層が全国を行脚するイベントは少ないのではないでしょうか。おそらく、訪日する人たちは、宿泊施設だけでなく、宿泊施設や会場の周辺での体験企画=アクティビティーに対する期待も高いと思われます。開催まであと約1年と迫っていますが、全国各地で生まれるビジネスチャンスを見逃さないようにしたいものです。
(株式会社セレブレイン代表取締役社長・高城幸司)
最新号を紙面で読める!