政府はこのほど、「GDP600兆円」「希望出生率1・8」「介護離職ゼロ」を達成するための「1億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策~成長と分配の好循環の形成に向けて~」を取りまとめた。法人税改革については、早期に実効税率を20%台に引き下げることを明記。強い経済の実現により得られる成長の果実を子育て支援や社会保障の基盤整備に充当する方針を示した。
安倍晋三首相は1億総活躍国民会議で、「一億総活躍社会が実現できれば、安心感が醸成され、将来の見通しが確かになり、消費の底上げ、投資の拡大にもつながる」との考えを表明。「デフレ脱却が見えてきた今こそ、少子高齢化という構造的な問題の解決に向けて動き出すべき」と述べ、「この緊急対策を、内閣の総力を挙げて、直ちに実行に移す」と決意を示した。
対策では、アベノミクスの「新3本の矢」のそれぞれの目標である「GDP600兆円」「希望出生率1・8」「介護離職ゼロ」の3分野で具体策を提示。強い経済実現に向けた対策としては、特に緊急な対応として賃金引き上げの恩恵が及びにくい低年金受給者支援を行うほか、中小企業の省力化・省エネ設備の導入支援などを盛り込んだ。
また、中小企業・小規模事業者の生産性向上などの支援や取引条件の改善とともに最低賃金引き上げに言及。「全国加重平均が1000円となることを目指す」考えを打ち出した。
出生率上昇に直結する対策では、不妊治療への助成拡充や、保育施設の整備を前倒しして、2017年度末までに50万人分を確保する方針を提示。小規模保育事業所の整備など多様なサービスを用意する。
介護離職対策としては、20年代初めまでに国有地を活用した介護施設や、サービス付き高齢者向け住宅の整備を加速し、50万人分の受け皿を整備。介護福祉士を目指す学生などに対する助成拡充なども行う。
一億総活躍社会実現に向けた緊急対策の主な内容
GDP600兆円(新第一の矢)
◆法人実効税率を早期に20%台に引き下げ
◆最低賃金を年率3%程度引き上げ。全国加重平均1000円目指す
◆女性活躍推進へ「103万円」「130万円」の壁への対応
希望出生率1・8(新第二の矢)
◆不妊治療への助成拡充
◆地域での出会いの機会の提供など結婚に向けた活動支援
◆17年度末までに保育施設50万人分整備
◆企業主導型の保育所整備・運営の推進
◆3世代同居、近居がしやすい環境づくり
介護離職ゼロ(新第三の矢)
◆20年代初めまでに介護施設50万人分整備
◆介護福祉士を目指す学生への支援拡充
◆介護休業給付の引き上げ
◆雇用保険の適用年齢の見直し
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