Q この度、レストランを開業することになりました。おいしい料理を皆さまに楽しんでいただけるよう、さまざまな食材にこだわりをもって、魅力的なメニューを開発・提供していきたいと思っています。近年、ホテルで提供していたコースのメニューに記載されていた食材と実際に使われていた食材が異なるという事件があったように記憶しています。景品表示法上、どのようなことに気を付ければ良いですか?
A メニューには、正しい食材名・原産地を表示してください。おいしさの伝え方には注意が必要です。お得感をあおり、不当表示と言われないよう、適正な書き方を心掛けてください。不当表示かどうかの判定は、消費者庁が行います。
顧客を誘引するものは景表法の対象となる
一流レストランやホテルで料理に使われている食材に関する表示について、偽りがあったという事件は記憶に新しいところです。不当な表示や景品の提供については、「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)という法律が規制をしています。
ご質問のレストランのメニューに記載されている食材などは、景品表示法上では「表示」が適正に行われているかどうかが問題になります。これは、「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示」であり、およそ事業者が顧客を誘引するために利用するものは全て含まれるといわれています。メニューも、お客様を誘引するものですから、この景品表示法の規制を受けることになります。
景品表示法では、その商品の内容自体を実際のものよりも著しく優良であると示す場合を「優良表示」、価格そのほかの取引条件について実際のものよりも著しく優良であると示す場合を「有利表示」として分けています。メニューに記載されている食材などはこの優良表示に該当します。
例えば、外国産の牛の肉にもかかわらず、「和牛」と表示していたら、消費者は和牛のおいしさを味わえると思い、そのメニューを注文してしまいます。このように、提供される商品の内容に関する表示であり、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害することになるので、不当表示となります。
不当表示にならないよう細心の注意が必要
メニュー表示の偽装事件などを受け、消費者庁は「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」を公表しました。
例えば肉だと、牛の成形肉をビーフステーキやステーキと表示することは、肉の切り身を消費者が想像するため、認められません。また、牛油を注入した牛脂注入加工肉を霜降りステーキと、外国産の牛肉を和牛と表示することなども、同様の理由から不当表示になります。
魚では、オーストラリアミナミイセエビを伊勢エビ、バナメイエビを芝エビ、赤西貝をサザエ、ロコ貝をアワビ、ランプフィッシュの卵をキャビアなどとすることは、高級食材の名前で消費者を誘引することになるため、認められません。このほかにも、市販のパンを自家製パンと、機械打ちの麺を手打ち麺とするなどといった表示も、その用法(製法)ならばおいしいと思っている消費者に購入を促しており、不当表示となります。
なぜ、実際と異なる名前でアピールしたいのか? それは、その食材に顧客を引きつける力があるからです。違う食材にそのアピール力がある名前を語らせると、不当表示になります。魅力的なメニュー表示をすることに一生懸命だと思いますが、不当表示にならないように注意しましょう。 (弁護士 森山 裕紀子) ※参考・消費者庁HP https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_160801_0001.pdf
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