「容器包装リサイクル法(以下、容リ法)」の施行によって、容器包装の分別排出・分別収集・リサイクルが社会に定着しました。4素材(ガラスびん、ペットボトル、紙製容器包装、プラスチック製容器包装)が再商品化されるようになった平成12年度と28年度を比較すると、指定法人が市町村から引き取った容器包装ごみの量は46万トンから123万トンに、再商品化製品量は39万トンから95万トンに増加しています。
しかし、容リ法の成果は量の増加だけではありません。
拡大生産者責任を初めて導入
容リ法はOECDが提唱したEPR(拡大生産者責任)の考え方をわが国で初めて導入した法律と言われています。OECDの定義によれば、EPRとは、生産者の製品に対する責任を製品の使用後の段階まで拡大する環境政策アプローチです。
①市町村から上流の生産者に(物理的および(または)財政的に、全体的にまたは部分的に)責任を転嫁する、 ②製品の設計において環境に対する配慮を組込む誘因を生産者に与える、という二つの特徴があるとされています。
再商品化費用の支払いという財政的責任を生産者(容リ法では特定事業者)が担う容リ法のスキームが①の特徴に当てはまります。費用が賄われたことでリサイクルが推進されました。
②の特徴の関連では、容リ法を契機に、事業者の自主的取り組みが進んでいることが挙げられます。容器包装リサイクルに関わる8素材(前述の4素材に加え、スチール缶、アルミ缶、飲料用紙容器、段ボール)の事業者団体は18年度以降、3R(排出抑制・再利用・リサイクル)推進の自主行動計画を策定し、毎年実施状況をフォローアップしています。
各事業者は容器包装の軽量化・薄肉化、適正包装の推進、詰め替え容器の開発などの容器包装の使用合理化を進めており、消費者ニーズの変化ももたらしています。また、小売事業者もレジ袋削減など消費者と連携した取り組みを進めています。
ペットボトルはごみから有価に
当初、逆有償(処理費用を支払わなければ処分できない)でスタートした使用済みペットボトルが18年度を境に有価で市場取引されるようになったことも成果の一つです。資源価値の向上の要因には、分別排出・分別収集が進んだこと、複数種の樹脂を集めるプラスチック製容器包装と違いPETという単一樹脂のリサイクルであったことに加え、業界が再商品化製品の品質と販売価格を下げる着色ペットボトルの使用を自主規制したこと、再商品化事業者の処理能力が不足していた時期には再商品化事業者の能力増強を業界として支援したことなどの自主的な取り組みがありました。
生産者の能力を生かす
EPRについては、EPRそのものが目的であり、生産者の責任を拡大するのは当然だとする考え方があります。一方、EPRを目的達成の手段と捉え、環境に配慮した製品を設計し、消費者に提供できる生産者の能力を生かして、社会的費用を最小化することがポイントだとする考え方があります。
消費者の分別排出、市町村の分別収集、事業者の再商品化費用支払いの定着とともに、事業者が費用の支払いにとどまらない自主的取り組みを推進している現状の評価を踏まえて、事業者の能力発揮を重視する後者のEPR観が環境負荷低減という結果を実際に出すことができる、より有効なアプローチであると指摘されています。
(青山直樹・公益財団法人日本容器包装リサイクル協会企画広報部)
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