日本商工会議所は4月19日、自由民主党首脳との懇談会を都内で開催した。冒頭にあいさつした日商の三村明夫会頭は、中小企業の景況感は総じて緩やかな回復基調にあることから、「成果を上げているアベノミクスについては、高く評価している」と強調。日本の最大の課題である潜在成長率を引き上げるため、政策の着実な実行や改革の断行により、国民の信頼を高めるよう求めた。
懇談会には日商から三村会頭はじめ、尾崎裕副会頭(大阪・会頭)、山本亜土副会頭(名古屋・会頭)、上野孝副会頭(横浜・会頭)、立石義雄副会頭(京都・会頭)、家次恒副会頭(神戸・会頭)、鎌田宏副会頭(仙台・会頭)、深山英樹副会頭(広島・会頭)、福田勝之副会頭(新潟・会頭)、礒山誠二副会頭(福岡・会頭)、岩田圭剛副会頭(札幌・会頭)、渡邊智樹副会頭(高松・会頭)ら15人、自民党からは高村正彦副総裁、二階俊博幹事長、竹下亘総務会長、岸田文雄政務調査会長ら10人が出席した。
三村会頭は、人手不足を理由に、業績は改善していないが賃上げせざるを得ない防衛的賃上げを行う中小企業が多いことから、「今や人手不足は、中小企業にとって最大の経営課題」と強調した。さらに、「中小企業は、財務的な余力がほとんどない中での賃上げを迫られているのが実情」と述べ、その大きな理由として、取引価格の改善の遅れを指摘した。商工会議所の調査では、消費者向け、企業向けのいずれでも、およそ4社に3社で価格転嫁が進んでいない現状が明らかになっていることから、三村会頭は、「深刻な問題。何とか進めていきたい」と語った。
また、潜在成長率の引き上げに向けた課題として、①多様な人材の活躍推進、②エネルギー問題、③震災復興の加速化──の3点を挙げた。①については、女性や外国人の活躍推進が必要であり、特に外国人については、専門的・技術的分野での受け入れに限定するという、これまでの原則に縛られない、より開かれた日本の実現に向け、「一定の専門性・技能を有する外国人のさらなる受け入れに向けた、新たな在留資格を創設すべき」との考えを示した。
②については、「S+3E」をバランスよく成立させる政策を構築し、多様なエネルギーの選択肢を確保するよう要請した。③については、被災地に必要なインフラ整備や原発事故の収束への取り組みを強化するよう求めた。
意見交換では日商から、働き方改革、小規模企業対策の拡充、観光振興、農商工連携、ストック効果の高いインフラ整備、社会保障制度改革、人手不足問題などについて意見を述べた。
高村副総裁は、「アベノミクスにより完全雇用が定着した。その裏返しで人手不足が広がり、経済成長の阻害要因になりかねないが、逆に、生産性革命や働き方改革を進める機会としなければならない」とコメント。また、「働き方改革は、中小企業には懸念があると聞いている。皆さまからの意見を聞いた上で進めたい」と語った。
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