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こうしてヒット商品は生まれた! FFミラー

平面でコンパクトなのに広範囲を映すことができるFFミラー。この鏡を見れば、エレベーターの外に待つ人がいるかどうかを確認できる

今年創業50周年を迎えたコミーは、鏡の専門メーカーである。主に安全や防犯のために使用される鏡を取り扱う。中でも昭和63年に発売したフラットなのに広範囲を映す「FFミラー」は世界初のオリジナル商品で、現在ではいくつもの業種で幅広く活用されている。

遊び心でつくった鏡が予想外の用途に使われる

多くの人が目にしているのではないだろうか。エレベーター、銀行のATM、航空機の手荷物入れなどに設置されている、フラットなのに広い範囲を映す不思議な鏡のことである。名称は「FFミラー(Fantastic Flat Mirror)」といい、主に安全・防犯分野で幅広く活用されている。

広い範囲を映すには凸面鏡が一般的だが、出っ張った部分が物などと接触して割れやすかったり、角度を勝手に変えられてしまうなどのデメリットがあった。「なぜ平面で広い範囲を映す鏡がないのか?」という素朴な疑問から開発に着手し、昭和63年にコミーが世に送り出した。

もともと同社は、看板を制作する会社として42年に創業した。一般的な看板の制作を請け負う一方、売り場などに設置する集客用のディスプレー商品にも力を入れ、遊び心から「回転ミラックス」という鏡を開発した。凸面鏡を2枚張り合わせたような形で、内蔵モーターにより回転する仕組みのものだが、ある展示会に出品したところ、30個も買っていった人がいた。

「そんなにたくさん何に使うんだろうと気になって、後で訪ねて行ったんです。すると万引き防止用に設置して、とても役立っていると言われました。そんな目的でつくったわけではなかったけれど、これがきっかけで鏡屋になりました」と同社社長の小宮山栄さんは当時を振り返る。

防犯というキーワードと「面白いものを追求していたら人の役に立った」という経験を得た小宮山さんは、その後さまざまな鏡を企画し商品化していった。

「ユーザー満足」を最優先しものづくりに生かす

FFミラーの開発も、素朴な疑問をきっかけに「まずは面白ければつくってみよう!」と開発が始まった。平面の鏡で広い範囲を映すことができるように、表面に特殊な加工を施した。実際につくってみると微小な傷やゴミなどで反射効果が損なわれるなど、なかなか計算通りにはいかなかったが、試行錯誤の末に厚さ約2㎜のFFミラーが完成した。

「ところが、この鏡をどこが必要としているのか分かりませんでした。そんな時に参加したビジネスセミナーで、専門家から『エレベーターミラーは未開発分野だから市場性がある』とアドバイスされたんです」

確かにエレベーターには死角があり、時には密室にもなる。安全や防犯の観点から、どんな壁面でも設置できるFFミラーはうってつけだと確信した。ちょうどそのころ、東京郊外にあるデパートから問い合わせがあった。エレベーターに駆け込もうとしているお客さまに気付かずドアを閉めることがないよう、確認用の鏡を探していたのだ。早速社員が現地に飛び、FFミラーの設置が決まった。

「1年ほどたったころ、現場の感想を聞きにデパートを訪ねました。すると、『エレベーターを待っている人を全員把握できるのがいい』『以前はお客さまの上半身しか見えなかったが、足まで見えるようになった』など、予想以上に喜ばれていることが分かりました」

同社では、顧客を「売ってくれる人」「買ってくれる人」「使ってくれる人」の三つに分け、「使ってくれる人」を最優先しているという。ものづくりは、使ってくれる人の声を反映させるべきとの考えから、あえて「CS(Customer Satisfaction・顧客満足)」ではなく「US(User Satisfaction・ユーザー満足)」を重視し、商品納入後も定期的に現場を訪ねて、「何のために、どう使っているか、本当に役に立っているか」を聞く仕組みを構築した。

航空業界進出に続き安全対策への活用に注力

誕生から約10年たったころ、FFミラーは航空機分野にも進出を果たす。社員が飛行機に乗った際、「手荷物入れにもFFミラーがあったら」と感じたのが発端だ。当時は平面鏡が装備されていたが、奥まで見えなかったのだ。早速、小宮山さんは航空業界に詳しい友人に参入を相談。国内の航空会社を訪問する機会を得た。

「現場の客室乗務員から『手荷物入れの確認作業を確実に、楽にこなすのは私たちの10年来の願い』という貴重な意見をもらい、大きなニーズを感じました。ただ、航空機に使用するとなると、耐火性や強度、構造の安全性など厳しい基準をクリアしなければなりません。そこで素材から見直して航空機用の開発を進め、いくつかの試験をクリアしたところで、試しにアメリカのボーイング社にサンプルを送ったんです。すると2カ月くらいして『近い将来、貴社の鏡が必要となるだろう』と回答が届いたんです」

平成9年、正式にボーイング社に客室視認用として採用され、その後、手荷物入れの確認用としても採用された。小宮山さんは「忘れ物チェック用」と認識していたが、スカンジナビア航空を訪問した際、実は「爆弾チェック用」だったと聞かされて驚いたという。以降も導入する航空会社が増えていき、現在100社以上の飛行機に40万枚以上が装備されるに至った。

近年、新たに力を入れているのは「衝突防止」への活用である。例えば東京のろう学校が校内の見通しの悪い場所にFFミラーを設置したところ、衝突の危険性が劇的に減少したのだ。地元の小学校、図書館、駅構内などに設置して、安全対策に役立てる取り組みにも力を入れている。

「FFミラーには、まだまだ可能性があります。今後も世の中の役に立つものづくりと、その活用法を考えていきたい」と小宮山さんは柔和にほほ笑んだ。

会社データ

社名:コミー株式会社

住所:埼玉県川口市並木1-5-13

電話:048-250-5311

HP:https://www.komy.jp

代表者:小宮山 栄 代表取締役

設立:昭和48年

従業員:37人(パートなど含む)

※月刊石垣2017年8月号に掲載された記事です。

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