日本商工会議所はこのほど、長時間労働是正や同一労働同一賃金に関する調査結果を公表した。調査は人手不足への対応などに関する調査とともに実施。3~4月にかけて全国の中小企業4072社を対象に行い、2776社から回答を得た。
時間外労働の上限規制が企業経営に与える影響については、「影響はない(現行のまま、特に何も対応しなくてもよい)」が49・5%で最多。一方、「影響が極めて大きい(事業継続が難しいレベル)」、「影響がある(課題はあるが対応可能)」と回答した企業も合計で4割超となり、2~3社に1社は影響があると推測される。
従業員規模別に見ると、51人以上の企業では、「影響はない」と回答した割合よりも、「影響がある」と回答した割合の方が高くなった。業種別に見ると、「運輸業」「宿泊・飲食業」「建設業」で「影響がある」と回答した企業が4割を超えた。
長時間労働是正に向けて、国が取り組むべき、または、国に支援してほしいことについては、「人手不足の解消」が52・3%で最も多い。次いで「長時間労働を生みかねない民間の商慣習・取引条件の是正」(38・9%)となった。「労働法・制度の規制強化(勤務間インターバル規制の一律導入などの厳格な規制導入、罰則・監督指導の強化など)」は6.7%で、長時間労働是正に向けて、一律に法規制などを導入することを希望する企業は少ない結果となった。
同一労働同一賃金指針案 「グレーゾーン広すぎる」35%
政府が示した同一労働同一賃金のガイドライン案については、「ガイドライン案について知らなかった(知っていたが、内容は未確認を含む)」が41・8%で最も多く、より一層の周知が必要と考えられる。また、内容に関しては、「分かりやすく実務の参考となった(現在の自社の労務管理が適切かどうか、判断できる)」が12・8%、「分かりにくく実務の参考とならなかった(現在の自社の労務管理が適切かどうか、判断できない)」が12・4%とほぼ同割合となり、ガイドライン案の内容を把握していても、自社の労務管理が適切かどうかの参考になったか否かについては判断が分かれた。
従業員規模別に見ると、従業員100人以下の企業では「ガイドライン案について知らない」と回答した割合が最も高かった。一方、従業員101人以上の企業では、「今後どのような影響が出るか不安」と回答した割合が最も高くなった。
ガイドライン案が参考にならなかった、また、今後不安に感じる理由については、「自社の賃金制度や就業規則をいつまでに、どのように変えていけばよいか分からない」(41・3%)、「グレーゾーン(裁判でしか判断できない部分)が広すぎる」(35・7%)が上位に挙がるなど、ガイドライン案のみでは判断がつかないといった理由が主であった。また、「人件費が極めて大きく増加し、事業継続が難しくなる(現在の利益水準では到底コスト増に耐えられないので、正社員の処遇引き下げに踏み込むなど、かなり抜本的なコスト削減策を取らなければならない)」も32・1%に上った。
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