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中小白書を閣議決定 小規模事業者に焦点

2014年版中小企業白書(平成26年4月25日) 第3部「中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来」 

5つの柱で政策提言

政府は4月25日、「2014年版中小企業白書」を閣議決定した。白書では、特に小規模事業者に焦点を当て、データや分析などで実証的にその実態や課題を明らかにすることに重点を置いている。以下は、白書の第3部「中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来」の概要を抜粋したもの。5つの柱「小規模事業者の構造分析」「起業・創業」「事業承継・廃業」「海外展開」「新しい潮流」に従って、具体的な政策提言を行っている。今後、中小企業庁では商工会議所向けの説明会開催も呼びかけ、白書の周知を図る。

白書の詳細は、中小企業庁のサイトhttp://www.chusho.meti.go.jpを参照。

「小規模事業者」の構造分析

需要開拓こそ最重要課題

中小企業の企業数、従業者数など

○小規模事業者は、地域需要をターゲットとする「地域需要志向型(約81%)」と、広域需要をターゲットとする「広域需要志向型(約19%)」の二つに類型化。また、組織面での成熟度によって、5段階のステージに分類化。

○今通常国会に提出予定の「小規模企業振興基本法案」においては、中小企業基本法の基本理念である「成長発展」のみならず、技術やノウハウの向上、安定的な雇用の維持等を含む「事業の持続的発展」を位置付け。

○今回の白書においても、同法案に基づき、組織面で上のステージを目指さずに、同じステージで持続的発展を目指す「維持・充実型」の小規模事業者にも光を当てた構造分析を行う。

○主な仕入れ先を見てみると、「地域需要志向型」は、8割以上を地域内から仕入れ、地域内に販売するため、地域の資金循環に貢献している小規模事業者。

○「広域需要志向型」は、約6割を地域内から仕入れ、地域外に販売するため、「外貨」を獲得してくる小規模事業者(≒「コネクターハブ企業」)。

○地域経済は、このような地域内の資金循環に貢献する「地域型」企業と地域外から「外貨」を獲得してくる「広域型」企業がバランスよく存在することで成り立っている。

○小規模事業者の最大の課題は、「需要・販路開拓」。人口減少・過疎化に伴う需要の縮小や、高齢化等に伴う消費者のニーズの変化にどう対応していくかが課題。

○「地域型」は、地域に古くから根差し、住民のニーズに応じて、財やサービスを提供してきた「顔の見える」小規模事業者。今後、大企業には決して参入できない、住民との信頼関係を活かしたニッチな需要の掘り起こしを目指すべき。

○「広域型」は、IT技術の進展等を捉まえて、インターネット販売を通じた国内外の販路開拓や自治体等が主導する大企業・中堅企業とのマッチングなど、独自の技術やサービスの強みを活かした広域な需要開拓を目指すべき。

起業・創業 

新たな担い手の創出

「起業大国」に向けた三つの課題と対応策

○近年、「起業希望者」が急激に減少(1997年に160万人台→80万人台へと半減)。一方、起業家数は大きく変化しておらず、毎年20~30万人の起業家が一貫して誕生している。

○開業率が低い理由として、以下の3つの課題が見えてくる。

1.起業意識…「教育制度が十分ではない」「安定的な雇用を求める意識が高い」「起業を職業として認識しない」

2.起業後の生活・収入の不安定化…「生活が不安定になる不安」「セーフティーネットがない」「再就職が難しい」

3.起業に伴うコストや手続き…「起業に要する金銭的コストが高い」「起業にかかる手続きが煩雑」

○「起業意識」を変革していくためには、起業に関心を持ってもらうべく、義務教育段階から起業家に接するといった起業家教育や、起業はリスクが高いという印象を改め、リスクが低く満足度は高い起業家も多いことを伝えていく。

○「起業後の生活・収入の安定化」のために、新たなガイドラインが適用された経営者保証制度や小規模企業共済といったセーフティーネットの充実に加え、失業保険の扱いが課題。さらに、兼業・副業をより促進していくことが必要。

○「起業に伴うコストや手続きの低減」のために、既存企業群が起業家を育てる「誰もが起業家応援社会の構築」や、フランスのような起業すると得する仕組み、先輩起業家や民間支援機関も巻き込んだ相談体制の充実が求められる。

事業承継・廃業 

次世代へのバトンタッチ

後継者の育成期間と、経営者の年齢別事業承継の準備状況

○事業承継の形態は、内部昇格や外部招へい等、親族以外の第三者への承継が占める割合が増加。こうした現状を踏まえ、今回の白書では、「第三者承継」を取り上げ、分析。

○後継者の育成には「3年以上必要」と考えている経営者が8割以上だが、60代で6割、70代で5割、80代でも4割が事業承継の準備ができていない。

○今後、早い段階からの事業承継の準備に着手してもらうよう、きめ細やかな情報提供や意識付けが必要。

○近年、休廃業・解散件数が増加。廃業を決断した理由として、「経営者の高齢化や健康問題」を理由とする者が約5割、「事業の先行き不安」が約1割。

○廃業に関する相談相手は「家族・親族」が約5割、「誰にも相談していない者」が約3割。今回、これまでほとんど把握されてこなかった廃業時の課題、廃業後の生活等についても分析し、その実態に迫る。

○第三者承継の支援策としては、外部にまで後継者を求める中小企業・小規模事業者に配慮し、高い事業意欲ある人材を確保して、後継者ニーズのある企業とマッチングさせるとともに、長期的にフォローアップしていく。

○廃業対策としては、①廃業に関する基本的な情報提供、②匿名性に配慮した専門家支援(電話相談)、③小規模企業共済制度のさらなる普及・拡大を図る。

海外展開 

成功と失敗の要因を探る

輸出を成功させるために最も重要だと考えている(成功と失敗の分かれ道となる)取組

○旺盛な海外需要を取り込むべく、中小企業・小規模事業者も積極的に海外展開を実施している。注目すべきことに、輸出未実施企業のうち、小規模事業者の方が輸出に関心を持っている企業の割合が多い。

○海外展開を進めるに際して、最大の課題は「販売先の確保」と「信頼できる提携先・アドバイザーの確保」。一方で、既存の公的な海外展開支援機関の利用状況及びその評価は、必ずしも高くない。

○中小企業・小規模事業者を現地でサポートするため、官民の支援機関で連携してネットワークを構築し、法務・会計・労務、資金調達、人材確保、パートナー発掘等を支援する「海外展開現地支援プラットフォーム」の強化・拡充を図る。

○海外展開支援を行っている民間企業は、少なくとも1万社、うち総合的なサポートをする企業は最低2千社。多様化する海外展開ニーズに柔軟に応えていくためには、このような民間の海外展開支援企業との連携も進める。

新しい潮流 

課題克服の新しい可能性

国内クラウドソーシング市場規模推移と予測と、ITを活用した資金調達の世界市場規模

○ITを活用して外部資源を活用する「クラウドソーシング」は、必要な時に必要な人材を調達する仕組み。クラウドソーシングにより、経営資源の乏しい中小企業・小規模事業者が長年の経営課題を克服できる可能性。

○ITを活用した資金調達(いわゆる「クラウドファンディング」)により、個人が企業に対して直接出資することが可能になり、様々な理由で金融機関等からの資金調達が困難であった企業の資金調達の可能性が拡大。

○事業を通じて社会的な課題を解決することから生まれる「社会価値」と「企業価値」は両立可能とするCRSV(Creating and Realizing Shared Value)は、地域に根ざした事業を行う中小企業・小規模事業者の一つの「生きる道」にもつながる。

○中小企業・小規模事業者の事業を通じた地域課題の解決は、地域活性化という「社会価値」を創造するとともに、その恩恵を受けた地域住民の所得向上等をもたらす。さらに、そのことが地域における新たな顧客創出や需要創造をもたらし、企業利益の増大という「企業価値」の創造にもつながる「好循環」を生み出す。そのための取組こそ持続的な事業活動を実現するというCRSVの鍵となる。

※なお、米国経営学者マイケル・ポーターは、2011年にこの考え方をCSV(Creating Shared Value)と称している。

事例1 望月農園(山梨県山梨市)

○桃とトマトを栽培している農園が、農産物と加工品のイメージを統一させるためにロゴを作成。経営資源の不足を補うためにクラウドソーシングを活用した。ロゴにより農園としての統一感を熟成し、新規の販売先が増加するなど、業績にも好影響が出ている。

事例2 神亀酒造 株式会社(埼玉県蓮田市)

○神亀酒造が造る純米酒は、熟成期間が2~3年必要であり、仕入代金の支払いと、収入を得られるタイミングにズレがある。ITを活用した資金調達によりその課題を克服するとともに、全国に純米酒の顧客やファンを拡大していった。