日本商工会議所の三村明夫会頭は10日、東京電力の「福島第一原子力発電所」を視察した。三村会頭は、同発電所における廃炉作業や汚染水処理などの進捗(しんちょく)状況、東京電力社員と協力企業の作業内容や労働環境など実際の現場を見学した。視察後、三村会頭は同行した記者団に、「廃炉作業はこれから30年、40年かかるが、着実に前に進みつつあるという印象を持った」と発言。今回の視察の大きな成果として、「汚染水処理がアンダーコントロール(管理)されており、凍土壁(凍土式陸側遮水壁)も完全に成功していることが分かった。聞くのと見るのとでは大違いだ」と述べた。東日本大震災後、同発電所を三村会頭が訪れるのは初めて。
早期復興支援へ意欲
視察には三村会頭の他、原発事故により被害を受けた地域から、いわき商工会議所の小野栄重会頭、原町商工会議所の高橋隆助会頭、相馬商工会議所の梅澤国夫副会頭が参加した。1~4号機の現状と放射性物質濃度の変化、汚染水処理と凍土式陸側遮水壁の運用状況、労働環境の改善や燃料取り出しに向けた進捗状況などについて説明を受けた後、東京電力ホールディングス・廣瀬直己社長らの案内で構内を視察。1~4号機の原子炉建屋や凍土式陸側遮水壁配管、多核種除去設備(ALPS)などの状況を見て回った。
視察後、三村会頭は、現場で作業に従事している東京電力の社員や協力企業の作業員らおよそ200人を前にあいさつ。「現場を見て、つくづく事故を起こしてはいけないと実感した。福島の教訓が日本全体に共有される必要がある」と指摘するとともに、「事故直後に比べ随分と普通の作業環境を取り戻しつつあり率直に喜んでいる」と述べた。また、「前例のない廃炉プロジェクトに取り組む皆さんを全国が見守っている。ここでさまざまなノウハウが蓄積され、プロジェクトエンジニアリングという面でも東京電力と協力企業が使命感・責任感を持って一緒に努力しながら、新しい技術を開発されている姿に感銘を受けた。どうか安全に作業をお願いしたい」と激励した。
視察後の記者会見で三村会頭は、「今後の廃炉作業をいかにスムーズに、どのくらいの時間とコストを掛けてできるかは未知の世界」との認識を示した。一方、構内では軽装で作業できるところが増え労働環境も大幅に改善していることや、作業に携わる関係者が使命感・働きがいをもって業務に臨んでいる姿勢に期待を寄せた。
また、今回、浜通り3商工会議所の会頭らと共に視察したことについて、「日商をはじめ全国515の商工会議所が福島との柔軟な対話を続ける意味で、一緒に視察できたことは大変良い機会であった」と強調。今後も継続して福島の早期復旧・復興を支援していく考えを示した。
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