学生服リユース店を全国展開、主婦の起業も応援
株式会社サンクラッド 代表取締役 馬場 加奈子(ばば・かなこ)
負担大きい制服の買い替え リユースに着目し起業
2011年に、学生服・体操服の買い取りと中古品の販売を行う学生服リユースショップ「さくらや」を高松市で立ち上げました。現在、パートナー契約により全国に43店舗を展開しています。
この事業を始めたきっかけは、当時小学5年生だった次女の制服の買い替えの悩みでした。成長期のためサイズが変われば買い替えは必要ですが、3人の子を持つ母子家庭のわが家には上着とスカートで2万円超は痛い出費。しかも1年前に買い替えたばかりだったのです。お下がりをもらおうにも、働きずくめで子どもの学校行事に参加できなかった私には頼めるママ友達もいませんでした。このことを職場の同僚に話すと、同じ悩みを持つ人は多いと分かりましたが、お下がりの譲り合いは「お礼に悩む」「押し付けたと思われたら嫌」と躊躇(ちゅうちょ)するようでした。昔あった地域の〝お下がりネットワーク〟は、ほとんど失われていたのです。
以前から子どもと一緒にいられる時間の融通の利く仕事を起業したいと考えていた私は、この経験から学生服リユース業の起業を思い立ちました。しかし、参考にと市内の同業者を調べると、リサイクル店はたくさんあっても中古の学生服や体操服を扱う店はありません。不安はありましたが、「前例がないなら自分でつくればいい」と決意、起業に至りました。
パートナー制度で多店舗展開
しかし店舗を借り、意気込んで開業したものの、お客さんはなかなか来ませんでした。それでも「これはママコミュニティーが希薄化した現代社会に役立つ仕事」と自分に言い聞かせ、毎日子どもたちとチラシのポスティングに回りました。数カ月後、来店した1人のお母さんが「こんなお店が欲しかった」と言ってくれ、周りの人たちにも口コミで宣伝してくれたのです。これを機に店は徐々に認知され、客数も増えてきました。
開業時50着だった中古学生服は、1年後には約2千着に。店には地域の人が集まり、母親たちのコミュニティーもできました。2年後には、自分も学生服のリユースショップを開きたいとの声が全国から寄せられるようになり、買い取り販売の在庫管理ができるオリジナルポスレジシステムを構築して、15年に子育て中の女性が自分の住むまちでさくらやを開業できるパートナー制度を創設。また、高松信用金庫と共同で女性の起業応援塾「キャリスタ」を開始し、3年間で120人の塾生を輩出しました。現在は、制服をバッグなどへリメイクする「さくら女子」事業など事業の幅も広げています。
さくらやは、地域の障がい者、高齢者にクリーニングやネーム刺しゅうをお願いするなど地域の協力を得て成長してきました。ニッチなビジネスですが、自分を信じて社会に役立つことをすれば人はおのずと応援してくれます。今後も共に地域の課題に取り組み、事業を拡大していくこと。それが私の役目であり応援してくれた方への恩返しになると思っています。
会社データ
社名:株式会社サンクラッド
所在地:香川県高松市伏石町2150-6
電話:087-887-6646
創業:2011年
事業概要:小売業・リユース業
HP:http://www.seifuku-sakuraya.com/
※月刊石垣2019年2月号に掲載された記事です。
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