小規模事業者持続化補助金「成果発表会」(概要) 販路開拓などに有効 好事例、全国から続々と

事例発表を熱心に聞き入る参加者

日本商工会議所では、政府の平成25年度補正予算での制度創設以降、「小規模事業者持続化補助金」事業を毎年実施している。これまでに、全国で延べ3万の小規模事業者を採択し、経営計画に基づく販路開拓の取り組みを各地商工会議所と共に支援してきた。こうしたことから、同所では中小企業庁および全国商工会連合会と共同で、同事業が実施3年を終え、4年目に入った本年4月に、小規模事業者の持続的発展に向けた機運のさらなる向上を目的に、「成果発表会」を初めて開催した。本発表会には、同補助金を活用した小規模事業者や、支援を行ってきた各地商工会議所・商工会の経営指導員などが参加した。特集では、その概要を紹介する。

「成果発表会」は、4月21日午後、経済産業省本館地下2階の「講堂」で開催された。(図1)

全国から約350人の小規模事業者・経営指導員などが参加し、持続化補助金の活用好事例の発表やパネルディスカッションが行われたほか、終了後の交流会では参加者間の活発な交流が図られた。

また会場内には、参加事業者の「紹介パネル」(企業概要や取り組んだ補助事業の内容・効果などを紹介)が掲示され、発表会開催の前後の時間などに、自社や他社のパネルを熱心に見る参加者の姿が多く見受けられた。

参加者のうち事業者からは「今後の事業のヒントが得られた」「交流会で、多くの事業者と名刺交換できて、人脈が広がるとともに仕事のつながりができそう」「後日、中小企業庁のホームページ(ミラサポ)で企業紹介シート(紹介パネルの原稿)を掲載してもらえるので、全国にPRできるとともに、当社の信用度が上がるため、とても感謝している」「今後一層、地元商工会議所と共に頑張っていきたい」などの声が寄せられた。

また、経営指導員からは「素晴らしい伴走支援の取り組みを聞くことができ刺激を受けた」「自所での支援の参考になった」「持続化補助金は、他の補助金に比べ少額だが、本当に全ての〝きっかけ〟になる補助金だと思う」などの声が寄せられた。

なお、「成果発表会」の模様や企業紹介シートは、今後「ミラサポ」(中小企業・小規模事業者を対象にした支援情報ウェブサイト)上に掲載される予定(ミラサポ・トップページのURLhttps://www.mirasapo.jp/)。 好事例発表者のうち、商工会議所の支援事業者(3事業者)の事例は、~を参照のこと。

~小規模事業者持続化補助金について~

全国に382万ある企業の85・1%を占める小規模事業者は、地域の経済社会・雇用を支える存在として重要な役割を果たすとともに、雇用やイノベーションの源泉でもある大きな可能性を秘めた存在である。しかしながら、小規模事業者は、わが国経済社会の構造変化による需要の減少に直面し、加えて、資金、人材、商品開発力などの経営資源の制約から、価格競争力や販売力が弱く、構造変化の影響を受けやすいという性質を有している。

他方で、顔の見える信頼関係に基づいた取引が強みであるため、大企業が応えきれていいないニーズを捉え、さまざまな商品・サービスを開発・提供することにより、国内外の新たな需要を開拓する潜在的な対応力を有している。

こうした小規模事業者の「事業の持続的発展」は、26年6月に制定・施行された「小規模企業振興基本法」で基本原則に位置付けられ、同法に基づく「小規模企業振興基本計画」の「10の重点施策」で「ビジネスプラン等に基づく経営の促進」「需要開拓に向けた支援」などが掲げられた。

また、同年9月に施行された「改正小規模支援法」により、小規模事業者による事業計画の策定やその着実な実行を、長年、小規模事業者の支援を行ってきた商工会議所・商工会が伴走して支援する体制が整備された。

こうした政策の理念・方向性を先取りする形で、25年度補正予算において「小規模事業者持続化補助金」が創設された。以後、毎年補正予算において予算措置が図られ、適宜、重点支援分野などの見直しを行いつつ、今日に至っている。

同補助金の大きな特徴として、

①小規模事業者に自らの経営計画に基づく経営を促すため、申請に際して「経営計画書」の作成が必要

②地域の商工会議所・商工会の支援を受けながら、「経営計画書」などを作成するとともに、採択後の補助事業実施の際にも、地域の商工会議所などから継続的な支援を受けながら取り組んでいくスキーム

③販路開拓などの取り組みに要する費用の3分の2を補助(補助上限:原則50万円)といった点がある。

また、28年4月の熊本地震や、同年8月の台風7号などにより、被害を受け、その被害を乗り越えて新たな販路開拓に挑戦する小規模事業者を対象に限定した、いわゆる「災害対策型」としても、同補助金が活用されてきた。

~小規模事業者持続化補助金実施の成果について(日本商工会議所が実施した採択事業者への追跡アンケート調査結果より)~

事業2年目である26年度補正予算の同補助金を活用した採択事業者を対象に、事業終了後1年程度経過の時点で追跡アンケート調査を実施した(28年11~12月に実施)。

同補助金では、経営計画書の作成を申請時の要件としているが、61・6%の事業者が同補助金の活用をきっかけに初めて経営計画書を作成したと回答している。また、経営計画書の作成による意識の変化を聞いたところ、「自社の強み・弱みが明らかになった」「他の補助金や支援制度の活用についても関心を持った」などの回答が多く寄せられ、経営に向き合おうとする意識が向上したものと考えられる。(図2)

なお、経営計画書などの作成に際して、地域の商工会議所の支援の必要性を聞いたところ、76・0%の事業者が、「商工会議所の支援がなければ作成は難しい」と回答している。

採択事業者の主要な取り組み(最も主要なもの一つ)については、多い順に、「ホームページの作成・改良」「チラシ・パンフレット・カタログなどの作成・配布」「店舗の改装・改修など」「広告掲載(紙媒体・ウェブ広告・ネット広告)、折込広告」「新商品、試作品の開発」であった。

さらに、補助事業の効果について聞いたところ、「新規取引先や顧客を獲得(客数増)」が51・8%(「見込み有」を含めると96・8%)、「売り上げ増」が40・7%(「見込み有」を含めると95・3 %)であった。

また、補助事業終了後の環境(業況)の変化について聞いたところ、「自社内の意識が前向きとなった」「取引先や顧客からの評価が高まった」などの回答が多く、補助事業を活用した販路開拓の取り組みが、経営の好循環につながっていることがうかがえる。

看板メニュー「フランス仕込みの生ソフト」

事例1 「雲間(くもま)から光が見えた」プロフェッショナルな伴走型支援

café du glace(高知県高知市)

業種:食料品製造業/従業員数:2人

代表者:前田 泰史氏

【事業者概要】

平成19年5月、高知市にて開業したアイスクリームの製造業である。開業以来、徹底的に素材にこだわった「無添加・手づくりのスーパープレミアムアイスクリーム」の製造・販売を行い、消費者ニーズに対応してきた。 代表者は、市内洋菓子店に勤務後、フランスの有名料理学校に留学し、フランス風のアイスクリームを学んできた。いわば本場フランス仕込みのアイスクリーム職人である。

【事業の内容】

経営計画の策定に当たり、仮説設定を行った上で、利益貢献度分析やクロスABC分析などの実施を行い、現状把握に注力。売れ筋・死に筋商品およびカテゴリーを把握した。 その後、看板メニュー「フランス仕込みの生ソフト」を開発。さらに、顧客を見据えた既存付随商品の整理や、店内外のプロモーション、子どもを囲い込む販促企画などに取り組んだ。

【事業の効果】

当店はこれまで、品質にこだわるあまり、売り手目線の商品開発を繰り返してきた。そして、店の色を打ち出せずにいた。しかし、経営計画策定を通じて繁盛店に向けた飲食店の成功ノウハウを教授頂くことができた。それにより、短期的な売り上げ増だけではなく、モノ売りからコト売りへと、自らの思考を180度変革することができた。これは補助金以上の効果だと考えている。

【事業者の声】

「雲間から光が見えた」の一言です。これまで、やりたいことや、こだわってきたことなどは数多くありました。しかしこの度、よい意味で打ち壊していただきました。具体的には、計画策定の前に、現状とあるべき姿を提示頂き、問題と課題を明確化してくださいました。さらに最もインパクトのある効果的な打ち手を提示いただいたことで、質の高い経営計画を作成することできました。商工会議所の濃密な伴走型支援は、われわれ小規模事業者にとって「希望の光」です。

【経営指導員の声】

真の問題把握を行うこと、実現可能性の高い効果的な打ち手を立案すること、そして濃密な実行支援を行うことを心掛けました。今後、PDCAサイクルをスパイラルアップさせるために伴走型支援を強化していきたいと考えています。これからも、粉骨砕身の精神で参りましょう。

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事例2 情報発信ツール活用し、小規模事業者の広告戦略を支援

株式会社ドリームディレクション(福島県いわき市)

業種:インターネット付随サービス業(広告・コンサルティング業)/従業員数:1人 代表者:濱津 匡壮氏

【事業者概要】

平成26年9月創業、インターネットメディア企業。地域ポータルサイト『cocoLINKいわき』http://cocolink-iwaki.comや求人マッチングサイトhttp://fukushima.story-job.jpを運営。情報サイトや求人サイトなどのメディア運営をメイン事業としている。

【事業の内容】

いわき市民向けに、地域ポータルサイトのスマートフォンアプリケーションを開発。 同アプリでは、店舗情報を検索・閲覧する基本機能に加え、GPS連動機能やプッシュ通知機能を実装し、いわき市民の利便性を向上させる。 プッシュ通知機能は、いわき市民がお気に入りの店舗からスマホへのポップアップ通知を受け取れる仕組みの導入により店舗の既存顧客へのよりタイムリーな情報提供が可能となる。

【事業の効果】

圧倒的な利便性向上により掲載店舗が拡大。また、店舗がユーザー(店舗顧客)に対して行う、アプリ登録を促す仕組みを導入するため、いわき市民の閲覧数増加が見込まれる。

【事業者の声】

当社の機能では、その時間ごとのタイムリーで有益な情報を低コストで直接消費者に発信することができます。 今回開発したプッシュ通知機能は他社と差別化したサービスであり、またプレミアム会員のみの有料サービスとすることで、自社の経営安定化に寄与することが期待できます。これからもいわき市内に埋もれた有益で、ワクワクする情報を提供できるインフラを構築して地域活性化に貢献していきたいと思います。

持続化補助金で作成した試作品

事例3 サムライの魂を受け継ぐ伝統技術「姫路黒桟革(くろざんがわ)」を活かした異分野への進出について

坂本商店(兵庫県姫路市)

業種:なめし革製造業/従業員数:1人

代表者:坂本 弘氏

【事業者概要】

大正12年に創業。剣道用品に使用される皮革素地の製造・販売を行っていたが、持続化補助金を転機としてファッション分野へ進出し、世界トップクラスのファッションブランドに採用された。平成28年9月には世界最高峰のファッション素材見本市「プルミエール・ヴィジョン2016」で日本企業として初となる「ハンドル賞」を受賞した。

【事業の内容】

安価な海外製の剣道防具に押され、受注が減少する中、自社の特徴である姫路黒桟革を新たな分野で活用するべく、ファッション分野へのアプローチを行った。 姫路黒桟革の魅力を訴求するべく、姫路黒桟革を使用したかばん・靴・ベルトなどの試作品開発を行った。展示商談会への出展と当社情報を発信する会社パンフレットの作成を行った。

【事業の効果】

かばん・靴などの最終製品に加工して展示することにより、当社が新たなターゲットとしているアパレル業界のバイヤーに当社商品(素地)を使用した製品の最終イメージを伝えることができ、効果的な営業を行うとともに新たな取引需要の拡大につながった。本事業開始から1年間で新規取引は約20件獲得でき、売上高は前年比100%の増加となり、数年前までの業績に回復した(現在、ファッション関係の売り上げが70%を占めている)。

【事業者の声】

本補助事業を実施することで自社では気付かなかった当社の強みを生かした新たな可能性をイメージすることができました。経営計画を作成することで将来のビジョンを意識するようになり、事業承継について考えるようになりました。また本補助金以外にも会議所の支援を受けて海外展示会への出展と商標権の取得などを行い、加速度的に事業の具現化が進みました。

【経営指導員の声】

何度もヒアリングを行う中で当事者にとっては普遍的な要素(黒桟革)でも、外部の目から見ると大きな可能性があることにたどりつきました。本補助金は、その可能性を形に近づけるための入口に立たせてくれた制度でした。企業支援に魔法はありませんが、事業者に寄り添いながら一歩ずつ共に歩んでいきたいです。