日本商工会議所は5月19日、医療保険制度改革にあたって現役世代への過度な依存を構造的に見直すことなどを柱とした要望書を被用者保険関係5団体(日商、健康保険組合連合会、全国健康保険協会、日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会)とともに、田村憲久厚生労働相など関係各方面に提出した。
要望書では、医療保険財政が厳しさを増す中、このままでは公的医療保険制度の維持は困難な状況に直面すると指摘。現役世代の納得性を確保するとともに、高齢者医療制度への重い拠出金負担を軽減し、将来にわたって持続可能な制度を構築するよう求めている。
具体的には、後期高齢者医療費へ公費5割を確保することに加え、前期高齢者医療費へも新たに公費投入を要望。また、後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入による国庫補助削減分について、国民健康保険の赤字補てんへの流用は、国の財政責任を被用者保険に転嫁するものであることから反対の意見を表明した。
そのほか、診療報酬の仕組みの再構築、医療機関の機能分化・連携の推進、ジェネリック医薬品の使用促進など医療費の適正化対策推進も求めている。
医療保険制度改革に関する被用者保険関係5団体の要望(全文)
平成26年5月19日
日本商工会議所
健康保険組合連合会
全国健康保険協会
日本経済団体連合会
日本労働組合総連合会
2013年12月に成立した「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律(プログラム法)」では、今後の医療保険制度改革について、「必要な法律案を平成27年に開会される国会の常会に提出することを目指す」とともに、最重要課題である高齢者医療制度のあり方については、「必要に応じ、見直しに向けた検討を行う」と規定された。それを受け、社会保障審議会医療保険部会では、今まさに医療保険制度全体の見直しに向けて議論が開始されたところである。
被用者保険は、医療保険制度の中核として国民皆保険を支えてきたが、高齢者を中心に医療費が増加するなか、なによりも高齢者医療への拠出金負担により、かつてない厳しい状況に追い込まれている。就労人口が減少する一方、団塊の世代がすべて前期高齢者に入っていく超高齢社会にあっては、今後も医療保険財政は厳しさを増すばかりであり、このままでは公的医療保険制度の維持は困難な状況に直面しかねない。この危機を回避するためには、最大の要因である高齢者医療制度の財源のあり方を早急に見直すとともに、伸び続ける医療費の適正化策を着実に実行することが必要不可欠である。
われわれ被用者保険関係5団体は、現役世代の納得性を確保するとともに、重い拠出金負担を軽減し、将来にわたり持続可能な制度を構築することをめざして、一致して下記の要望事項をとりまとめた。
政府・与党におかれては、次期改革案の取りまとめにあたり、われわれの総意を受け止め、その実現方に真摯に臨まれるよう切に要望する。
(要望事項)
■医療保険制度改革にあたっては、現役世代の納得性を確保するとともに、現役世代に過度に依存する制度を構造的に見直すべきである。
具体的には、75歳以上の医療費への公費5割を実質確保することはもとより、特に、前期高齢者の財政調整の仕組みを見直し、新たに公費投入を行うべきである。さらに、現役世代の拠出金負担に一定の上限を設定する等、負担増に歯止めをかける仕組みを導入する必要がある。また、これらの負担構造の改革に要する財源としては、消費税の税率引上げ分を活用、充当すべきである。
■プログラム法では、被用者保険における後期高齢者支援金の全面総報酬割導入が検討課題とされているが、これによる国庫補助削減分を国民健康保険の赤字補填に流用することは、国の財政責任を被用者保険に転嫁するものであり、断固反対である。
■超高齢社会においても持続可能な医療保険制度を構築するためには、診療報酬の仕組みの再構築、医療機関の機能分化・連携の推進、ジェネリック医薬品の使用促進、療養の範囲の見直し等様々な医療費適正化対策を更に推進すべきである。
■被用者保険の保険者が医療費の適正化・効率化や加入者の健康の維持・増進に効果的に取り組んできた努力を十分尊重するとともに、今後とも国保と被用者保険が共存し、地域と職域それぞれが各々の連帯を基礎に、保険者機能を発揮できる制度体系を維持すべきである。
最新号を紙面で読める!