日本商工会議所は4月21日、東京商工会議所と共同で「雇用・労働政策に関する意見」と取りまとめ、政府など関係各方面に提出した。意見書では、同一労働同一賃金に関する検討の在り方など緊要性の高い政策課題への意見を表明。また、多様な働き手の労働参加や労働生産性の向上など、中小企業の活力強化に向けた環境整備について労働政策の整備や支援策の拡充を求めている。意見書の概要は次の通り。
1 緊要性の高い政策課題に対する意見
(1)同一労働同一賃金に関する検討の在り方
同一労働同一賃金は具体的な基準を示すとともに、中小企業の雇用慣行や労務管理への影響を十分に配慮した検討を行うこと
(2)賃上げ・最低賃金の引き上げが可能な環境づくり
中小企業の収益力向上につながる取引価格の適正化や労働生産性向上への支援を図るべき。また、厳しい環境にある中小企業の賃金支払い能力を踏まえ慎重に判断すべき
(3)待機児童問題と「103万円・130万円の壁」の早期解消
都市部を中心に生じている待機児童問題の解消加速化プランを着実に進めるとともに、「103万円・130万円の壁」については手取り収入の減少が生じる不合理を解消すること
2 働き手(労働力の量)の拡大
(1)若年層
○採用時のミスマッチを防ぐために有効なインターンシップを中小企業が取り組めるよう規制の緩和やノウハウ供与などの支援を行うべき
○若年無業者(ニート)の就労に向けた支援を行うべき
○専門高校の一部で採り入れられている企業実習型の職業教育を普及させるべき
○大学新卒の採用活動時期の問題については2016年以降の動向を継続して見守ること
(2)女性
○女性が働きやすい環境づくりに取り組んでいる中小企業に対し、ハード対策費の負担軽減などの経済的支援を図るべき
○管理職登用率という形式的な目標を課すだけではなく、さまざまな活躍の在り方を示すべき
○中小企業が女性の活躍推進に関する自主行動計画を策定するにあたってノウハウの支援やインセンティブ付与を図るべき
(3)高齢者
○就労を希望する多くの高齢者の労働参加が進むよう、マッチング機能の充実や公的職業訓練の拡充を図るべき
○産業雇用安定センターやシルバー人材センターの機能拡充について周知すべき
○健康面・安全面の環境整備を行う企業に対する支援を行うべき
3 労働生産性(労働力の質)の向上
(1)人材育成
○指導ノウハウの支援や、産業界のニーズを具体的にくんだ公的職業訓練を拡充すべき
○能力開発の機会が少ないとされてきた非正規雇用労働者に対する職業訓練を充実すること
○ジョブ・カード制度の周知と広報の強化を図ること
(2)長時間労働の抑制
○恒常的な長時間労働抑制に向けた企業の成功事例の紹介や業務改善のノウハウ提供、業界独自の取引慣行の見直しなどに向けた支援を図るべき
○労働生産性向上の鍵であるIT・ロボット活用を推進するための支援体制を構築すべき
○多様なニーズに合わせた働き方の選択肢を広げる労働基準法等改正案の早期成立を図ること
(3)健康経営の普及促進
○「健康経営」が中小企業に一層普及し、取り組みが促進されるよう、取り組み内容の具体化、ノウハウの共有化、「健康経営」に関する専門家の育成・派遣に対する助成などの環境整備に努めるべき
4 中小企業の活力強化に向けた環境整備
(1)働き手と企業双方のニーズに応える雇用環境の整備
○育児・介護休業法などの改正は、成立から施行までの期間が短いことから、その内容の周知に努めること
○ものづくり分野における専門技能者などの即戦力のニーズに対応すべく、ハローワークの機能向上を図ること
○外国人留学生と中小企業とのマッチングを支援すること
(2)適正な財源負担
○子育て支援のための費用負担は安定的な財源確保のためにも税による恒久財源で行うべきであり、現行の事業主拠出金はあくまでも時限的・限定的なものとして、2018年度以降は他の財源の道筋を付け、廃止の方向で進めるべき
○雇用保険財源に関する国庫負担割合は、失業が政府の経済政策・雇用対策とも関係が深いことから少なくとも現状維持を続けるべき
(3)雇用に関するルールほか
○2018年以降、有期雇用の無期転換申込権の行使が発生することを踏まえ、内容の十分な周知を行うこと
○障害者雇用率や納付金適用対象の拡大ついては、雇いたくても応募が集まらない中小企業の状況を配慮すべき
○小規模事業場が行うメンタルヘルス対策の支援を行うこと
○社会保険諸手続のより一層の効率化と各種助成金の申請手続の簡素化を図ること
(4月21日)
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