加賀商工会議所(石川県)と加賀市などは、今年の新成人約670人に、加賀の代表的な伝統工芸品である山中漆器の置き時計を贈ることにした。同市では、若者に地元の優れた伝統工芸品をアピールし、実際に使うことで良さを知ってもらおうと、毎年成人式の記念品に工芸品を贈呈、今年で15回目となる。昨年5月16日~6月30日に市内の作家や工房などを対象に作品を募集、3段階の審査を経て、1月18日に正式決定した。
伝統工芸を知る機会に
加賀市には九谷焼をはじめとしてさまざまな伝統工芸品があり、山中漆器もその中の一つだ。その歴史は古く、安土桃山時代に木地師(ろくろを用いてわんなどの木工品をつくる職人)の集団が越前の国から山中温泉の上流地域に移住したことに始まったとされている。その後、湯治客への土産物としてつくられ、江戸時代中ごろからは、会津・京都・金沢などから蒔絵(まきえ)の技術を導入して塗り物の産地として発展してきた。
今回記念品に決定した置き時計は、木地に細い線を付ける伝統技法「千筋(せんすじ)」により20本の年輪を表したというものだ。記念品の募集に当たっては、条件として「若者の感覚に合う」「加賀・山中の手技を生かす」などが挙げられており、市内のデザイン専門家や伝統工芸関係者らによる書類審査、試作品審査を経て、新成人で構成される成人式企画委員会委員による最終審査で記念品にふさわしいとして選ばれた。
この置き時計は、4月2日に行われる成人式で、新成人全員に配られる。同所は、「若者が自分のまちの伝統工芸品に親しむことで、工芸品を身近に感じたり、内外にその良さを発信する力になってくれれば」と期待している。
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