家庭や小規模事業所など低圧需要家向けの電力小売りの自由化が4月から開始されるのを受け、需要家に電力を販売する小売電気事業者がさまざまな料金プラン、サービスの公表を始めました。テレビなどの広告により「電気事業者を選べる」ことが急に身近に感じ始めたのではないでしょうか。そこで今回は、小売電気事業者を選ぶ際、トラブルに巻き込まれないためのノウハウをご紹介します。
ガイドラインで問題行為を規定
電力小売り全面自由化に向け、経済産業省は新たに「電力の小売営業に関する指針」(通称=小売営業ガイドライン)(案)を作成しました。自由化に伴い、さまざまな事業者が電力小売り市場に参入することを踏まえ、例えば平均的な月額料金例を公表するなど、事業者による自主的な取り組みを促すとともに、事業者に電気事業法や関係法令を遵守させるためのものです。
ガイドラインでは、事業者が営業活動を行う際の「望ましい行為」と「問題となる行為」を規定しています。「望ましい行為」として事業者による自主的な取り組みを促すものと、業務改善命令が発動される原因となり得る「問題となる行為」を明らかにし、注意喚起を呼び掛けています。
まず、小売電気事業者は、電力の供給契約を結ぶ前にその内容を必ず書面で説明し、契約締結時には書面で交付することが法律で義務付けられます。皆さまが「書面以外での契約締結」を希望していないのに、書面での説明がなかった場合は法律違反ですので、必ず書面で説明を受ける権利があることを主張してください。
また、契約では電気料金の算出方法を明記することになっており、例えば「時価」や「当社が毎月末に請求する額」といった不明朗な提示は、「問題となる行為」にあたりますので、きちんと契約書などを確認いただくことが重要です。
業務委託の有無を確認
また、小売電気事業者が営業を行う上で、電気以外のサービス分野で既に顧客網を持つ他の事業者に、営業業務を委託できるようにして、さまざまな業種から市場参入しやすくなります。このため、小売ライセンスを保有していない事業者でも、契約締結の「媒介」「取り次ぎ」「代理」を行うことが認められています。その場合でも、媒介、取り次ぎ、代理を行う事業者があたかも自らが電気を供給するかのような誤解を与える営業は、「問題となる行為」となり得ます。
以前ご紹介した、小売電気事業者のリストhttp://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/retailers_list/に掲載されていない事業者であっても、複数の営業モデルが存在しますので、本当に小売電気事業者から代理業務の委託を受けているかなどを確認することが必要です。ただし、どの営業モデルであっても、契約内容を書面で説明する義務があります。仮に媒介、取り次ぎ、代理を行う事業者から書面説明を受けなかった場合は、小売電気事業者の責任にもなります。
苦情への迅速な対応を義務付け
加えて小売電気事業者は、苦情や問い合わせについても、適切かつ迅速に対応することが義務付けられていますので、代理業務などを行う事業者が苦情や問い合わせに対し「問題となる行為」を行った場合には、小売電気事業者はその内容を踏まえて適切に対応する必要があります。万が一、苦情や問い合わせに対応しないようなことがありましたら、委員会事務局までお知らせください。
このように、電力小売り全面自由化により、小売電気事業者の創意工夫や事業者間の価格競争によるコスト低減など、需要家はさまざまなメリットが期待される一方で、市場原理に委ねるだけでなく、契約上のトラブルに巻き込まれることがないよう、委員会では事業者の営業活動に対し必要なルールを整備し、厳格に運用していく所存です。こうした仕組みがあることをご理解いただくことで、より良い形で自由化の恩恵を受けることにつながればと思います。
(電力取引監視等委員会委員・箕輪恵美子)
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