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IT人材白書2020(概要) 独立行政法人情報処理推進機構 IT人材、量・質とも不足 組織変革がDX推進の鍵

(図1)ユーザー企業のIT人材〝量〟に対する過不足〔過去5年間の変化〕

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が毎年アンケート調査を実施し、その結果を取りまとめている「IT人材白書」。その2020年版がこのほど公開された。同白書では、IT企業、ユーザー企業ともにIT人材の「量」「質」に対する不足感を訴える声が年々増加していると指摘。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)に積極的に取り組む企業ほど、さまざまな人材が集まる組織に変革しているという。特集では、同白書の概要を紹介する。

Ⅰ ユーザー企業のIT人材を取り巻く変化

IT人材の〝量〟に対する過不足感【過去5年の変化】

〇図1は、ユーザー企業におけるIT人材の〝量〟に対する過不足感について5年間の変化を示したものである。IT人材の〝量〟に対する過不足感の割合を経年で見ると、2019年度調査結果では「大幅に不足している」割合が1・9ポイント上昇と上昇幅は小さくなっているものの、年々高くなる傾向にある。

IT人材の〝質〟に対する不足感【過去5年の変化】

〇ユーザー企業におけるIT人材の〝質〟に対する不足感について5年間の変化を見ると、「大幅に不足している」割合は、16年度調査から18年度調査までは33%前後が続いたが、19年度調査では39・5%となった。

IT人材の〝質〟に対する不足感【昨年との比較】

〇ユーザー企業におけるIT人材の〝質〟に対する不足感について昨年度と比較すると、1001人以上の企業で〝質〟に対する不足感が増している。「大幅に不足」が今年度は48・3%、昨年度は38・1%で10・2ポイントの上昇となった。

ユーザー企業の中途採用したIT人材の直前の勤務先業種

〇IT人材を中途採用したユーザー企業に〝中途採用したIT人材の直前の勤務先業種〟を尋ねた従業員規模別の結果を18年度調査と比較すると、顕著な傾向として、301人以上1000人以下のユーザー企業で「ユーザー企業のIT部門」の割合が43・0%となり、22・6ポイント上昇している。

社内にITのスキルを蓄積・強化するための内製化

〇社内にITのスキルを蓄積・強化するための内製化状況を尋ねた。従業員規模別の結果を18年度調査と比較すると、「企画・設計など上流の内製化を進めている」割合が、従業員規模が大きくなるに従い上昇している。顕著な傾向としては、1001人以上のユーザー企業で「企画・設計など上流の内製化を進めている」割合が47・8%となり、14・5ポイント上昇している。

ユーザー企業でITに関する業務を担当している部門(部署)

〇ITに関する業務を担当している部門(部署)をユーザー企業に尋ねた結果をIT業務の内製化状況別に比較すると、「企画・設計など上流の内製化を進めている」ユーザー企業では、「IT部門」が「全社ITの企画」を担当している割合が85・5%と高くなっている。

IT業務の内製化とDXの取り組み

〇IT業務の内製化状況を尋ねた結果をDXの取り組み別に比較してみると、DXに取り組んでいる企業は、「企画・設計などの上流の内製化」を進めている割合が41・9%と高い。それに対し、DXに取り組んでいない企業は内製化を「進めていない」割合が51・9%である。

IT人材の獲得・確保とDXの取り組み

〇IT人材の獲得・確保を尋ねた結果をDXの取り組み別に比較すると、ユーザー企業でDXに取り組んでいる企業は、「中途採用」や「新卒採用」「他部門からの異動」を行っている割合が高いことが分かる。

企業文化・風土とDXの取り組み

〇DXに取り組んでいる企業は、「今後目指すべきビジョンや方向性が明確であり、従業員に周知されている」の割合が「よく当てはまる」「ある程度当てはまる」を合わせると75・4%と高く、DXに取り組んでいない企業より16・4ポイント高い。

また、「多様な価値観を受け入れる/重んじる」「果敢にリスクを取り、新しいことにチャレンジすることが尊重される(変革や挑戦を好む)」の「よく当てはまる」の割合もDXに取り組んでいない企業よりやや高い。DXに取り組んでいる企業では、企業文化・風土が良好であり、DXの取り組みを加速させる要素の一つと考えられる。

Ⅱ IT企業のIT人材を取り巻く変化

IT人材の〝量〟に対する過不足感【過去5年の変化】

〇IT企業におけるIT人材の〝量〟に対する過不足感について5年間の変化を見ると、IT人材の〝量〟に対する不足感は、16年度でやや緩和したものの、17年度に「大幅に不足している」割合が急激な高まりを見せたが、再度緩和している。

IT人材の〝量〟に対する過不足感【昨年との比較】

〇IT人材の〝量〟に対する過不足感を18年度調査と比較すると、19年度調査では、300人以下のIT企業で「大幅に不足している」割合が低下している。特に31人以上100人以下のIT企業では11・0ポイント、30人以下のIT企業では8・9ポイント低下している。一方で301人以上のIT企業では、「大幅に不足している」割合が上昇しており、特に301人以上1000人以下のIT企業では9・3ポイント上昇している。

IT人材の〝質〟に対する不足感【過去5年の変化】

〇IT企業におけるIT人材の〝質〟に対する不足感について5年間の変化を見ると、IT人材の〝質〟に対する不足感は16年度でやや緩和し、17年度、18年度と「大幅に不足している」割合が再度高まりを見せたが、19年度は微減となった。

IT人材の〝質〟に対する不足感【昨年との比較】

〇IT人材の〝質〟に対する過不足感を18年度調査と比較すると、19年度調査では、100人以下のIT企業で「大幅に不足している」割合が低下している。31人以上100人以下のIT企業では6・6ポイント、30人以下のIT企業では4・9ポイント低下している。一方で101人以上のIT企業では「大幅に不足している」割合が上昇しており、特に301人以上1000人以下のIT企業では5・9ポイント上昇している。

IT人材のスキル把握で利用しているもの

〇従業員規模にかかわらず、「自社の独自基準」を利用している割合が上昇している。その一方、「自社の独自基準」以外については、従業員規模にかかわらず軒並み利用している割合が低くなっている。

〇DXの取り組みなどによるビジネスエリアの拡大により、IT企業がIT人材に求めるスキルの枠が広がっていることが想定される。また、スキルの多様化で、評価の対象とするスキルが決められない状況もあり、そのような要因から「自社の独自基準」の割合が高くなっている可能性がある。

IT企業の事業内容とDXの取り組み

〇IT企業に事業を尋ねた結果をDXの取り組み別に比較してみると、「システム受託開発」を除くとDXに取り組んでいる企業は、「IoT、ビッグデータ、AI関連サービスの開発・提供」「RPA(Robotic Process Automation)、ビジネスプロセス最適化(データの整備、準備)の開発・提供」「パッケージソフトウエア開発・提供関連など」が取り組んでいない企業より行っている割合が高い。取り組んでいない企業は、「技術者などの人材派遣、提供」を行っている割合が高く、取り組んでいる企業よりも、事業自体も多角化していない。既存のビジネスモデルや業務スタイルを継続している。

IT人材の獲得・確保とDXの取り組み

〇IT人材の獲得・確保を尋ねた結果をDXの取り組み別に比較すると、DXに取り組んでいる企業は、「中途採用」や「新卒採用」「外国人採用」を行っている割合が高いことが分かる。今後、DX推進に伴い、IT企業は事業の根幹を揺るがすIT人材の獲得・確保は事業継続・強化を図るためにユーザー企業と比較すると、積極的に行っている様子がうかがえる。

企業文化・風土とDXの取り組み

〇DXに取り組んでいる企業は、「果敢にリスクを取り、新しいことにチャレンジすることが尊重される(変革や挑戦を好む)」の割合が「よく当てはまる」「ある程度当てはまる」を合わせると59・6%で、DXに取り組んでいない企業より14・5ポイント高くなっている。

また、「今後目指すべきビジョンや方向性が明確であり、従業員に周知されている」の「よく当てはまる」の割合もDXに取り組んでいない企業よりやや高い。IT企業においては、DXに取り組んでいる企業ほど、リスクを取ってチャレンジする前向きな姿勢を持っており、DXの取り組みを加速させる要素の一つと考えられる。

Ⅲ デジタルビジネス推進企業動向

デジタルビジネス推進企業のDX推進やデジタル強化に取り組む専門部署の役割

〇「専門部署がある」と回答したデジタルビジネス推進企業に、DXの推進やデジタルビジネス強化に取り組む専門部署の機能を尋ねた。DX専門部署を置いている企業では、DX遂行当事者としての役割と、社内関連部署の支援役(伴走者)という役割に加え、「DXに関する全社戦略の立案」「DXに関する戦略や目標の社内関連部署への指示」「DXに関する他社などとの連携の推進」といった、全社のコントロールタワー的な役割も担っている。

デジタルビジネス推進企業のDXやデジタルビジネスの取り組み内容と成果

〇デジタルビジネス推進企業に、DXの取り組み状況を尋ねた結果は、「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」が47・6%、「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取り組んでいる」が32・4%、「部署ごとに独自、個別にDXに取り組んでいる」が20%である。

〇デジタルビジネス推進企業に、DXの推進やデジタルビジネス強化の取り組み内容と成果を尋ねた結果を、DXへの取り組み状況別に比較すると、DXの推進やデジタルビジネス強化の全ての取り組み内容において、「全社戦略に基づいて全社的にDXに取り組んでいる」企業で、「成果あり」の割合が高くなっている。

デジタルビジネス推進企業のDXに対応する上での課題

〇「成果なし・取り組んでいない」デジタルビジネス推進企業では〝内向き問題〟(危機感の浸透や変革に対する社内の抵抗、社内人材の育成など)を課題とするケースが多いが、「成果あり」と回答しているデジタルビジネス推進企業においては〝外向き問題〟(連携先とのWin-Win関係、DX人材の社外からの獲得)が多く見られるのが特徴といえる。また、既存システムの改修負担、プロジェクト開始時のリスクテイク判断を課題としているのも「成果あり」と回答しているデジタルビジネス推進企業の特徴であり、DXを実際に推進することにより切実に実感している様子がうかがえる。

デジタルビジネス推進企業の企業文化・風土

〇デジタルビジネス推進企業に、企業文化・風土を尋ねた結果を、DXやデジタルビジネスの取り組み内容と成果別に比較すると、「成果あり」の企業とそれ以外の企業では、「リスクを取り、チャレンジ」「多様な価値観受容」「仕事を楽しむ」「意思決定のスピード」の差が大きい。

Ⅳ IT人材動向

IT人材の自主的な勉強の状況

〇学び直しの実態のほか、重視するワークスタイルや転職の実態などについて、先端IT従事者と先端IT非従事者とを比較した。

〇スキルアップに関しては、先端IT非従事者は、先端IT従事者に比べ、時間も費用もかけていないことが分かった。自主的な勉強の状況に関しては、「業務外(職場以外)ではほとんど勉強しない」と答えた割合は、先端IT非従事者では51・6%と半数以上を占めたのに対し、先端IT従事者では26・2%だった。

IT人材のITやデジタル関連のスキルアップに向けた勉強に関する課題

〇「ITやデジタル関連のスキルアップに向けた勉強に関する課題」について尋ね、先端IT従事者と先端IT非従事者の回答を比較した。先端IT非従事者で最も多かった回答は「勉強の必要性を感じない(現在のスキルで十分だと思うから)」だったのに対し、先端IT従事者で最も多かった回答は「業務が忙しく、勉強時間が確保できない」であり、差異が見られた。また、「新しいスキルを習得しても、それを生かす場がない」という回答は、先端IT従事者と先端IT非従事者の双方に多く見られた。(図2)

IT人材の転職理由

〇「転職の理由」について、転職経験者に尋ねた。先端IT従事者は「自分のやりたい仕事ができなかったから」が最も高く、34・8%である。先端IT従事者と先端IT非従事者を比較して、最も差異が大きかった回答は「クリエーティブな仕事ができなかったから」だった。先端IT従事者では17・9%なのに対し、先端IT非従事者では8・3%であった。次に差異が大きかったのは「先端的な仕事ができなかったから」である。