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コラム石垣 2021年4月1日号 丁野朗

もう何度目かの訪問となるが、3月半ば、福井県の九頭竜川上流域にある勝山市の平泉寺白山神社を訪ねた。

▼平泉寺は、717(養老元)年に泰澄によって開かれた1300年の歴史を持つ古刹(こさつ)である。最盛期の室町時代後半には、とりでや堀を備え、全山を石垣に囲まれた要害となった。東西1・2キロメートル、南北1キロメートルに及ぶ広大な敷地の中に、南谷360坊、北谷240坊、48社、36堂、僧兵8000人を擁する巨大な宗教都市が形成された。京都比叡山延暦寺の勢力下に入っていたが、その規模は、おそらく延暦寺をしのぐものと推察される。

▼しかし1574年の一向一揆によって全山が消失、灰塵に帰した。その後、羽柴秀吉の支援で、顕海が再興したものの、その存在は徐々に歴史の中に忘れ去られてしまった。近年の発掘調査では、南坊を中心とする現場から、中世の驚くほど美しく整備された石畳が次々と姿を現している。数年にわたる発掘調査だが、まだ全体の1%にも満たないという。その平泉寺白山神社の物語が、2019年の日本遺産に認定され、いま再び大きな注目を集めている。

▼日本の歴史文化は、驚くほどに多様かつ奥が深い。しかし、一部の著名なものを除き、その多くは歴史の中に静かに埋もれている。しかも地域の衰退とともに、これらを保全する力や仕組みは次々と失われている。文化財の多くは、それぞれの時代の富と繁栄のシンボルである。これら先人が残した「歴史的投資」ともいうべき文化資源を、長年にわたり保全活用してきたのも地域の力である。その地域が疲弊すれば、全ては失われてしまう。今こそ、文化資源の新たな保全活用のための仕組みづくりに真剣に向き合う時である。

(観光未来プランナー・丁野朗)

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