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コラム石垣 2021年4月11日号 中村恒夫

例年の春ならば、都心を忙しそうに歩く就活生の姿がめっきり減った。オンラインによる面接が一般化してきたためだろう。面接室に入って来たときのあいさつ、複数の面接官に対する態度など、対面で確認する基本的事項が「オンラインでは分からない」(業界団体幹部)という声も聞く。

▼一方で、首都圏の企業への入社を希望する地方の学生にとっては、時間、経費とも大幅な節約になる。会社訪問を目的に夜行バスで上京したり、宿泊代を節約するためにネットカフェで寝泊まりしたりする必要はなくなる。採用する側からも「地方の大学の優秀な学生から志願者が増えた」(中堅企業役員)とオンライン化を歓迎する意見が出ている。新型コロナウイルスの感染に歯止めがかかるようになっても、オンラインを活用した流れは止まらないと予想される。

▼この流れに沿って、通信端末や必要なアプリを手掛ける企業の業績が伸びている。逆に、就活用のスーツ、長距離バス、宿泊施設などへの需要が落ち込むのは避けられない。関係する企業は新たなニーズを掘り起こすか、別の事業への進出を図らなければならなくなるだろう。

▼就活を巡る動きは一例にすぎない。「ワクチン投与でコロナ禍の前の状態に戻れば業績も改善する」といった希望的観測にすがっていたら、経営自体を危うくしかねない。日常生活でマスクを外せるようになっても、自粛期間中に切り捨てられた個々の生活に不要なモノ、サービスへの需要は完全には回復しない可能性が高いとみるべきだ。売り上げが落ち込んだ事業者や収入の減った労働者に対する支援金支給のような対症療法だけではなく、産業政策、雇用政策の面で大胆な決断を望みたい。

(時事総合研究所客員研究員・中村恒夫)

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