日本商工会議所の三村明夫会頭は5月17日、全国商工会連合会の森義久会長、全国中小企業団体中央会の森洋会長と共に、首相官邸に加藤勝信内閣官房長官を訪ね、3団体連名による要望書「最低賃金に関する要望~コロナ禍の厳しい経済情勢を踏まえ、『現行水準の維持』を~」手渡し、要望の実現を強く求めた。日商の三村会頭ら3団体首脳は、5月11日に梶山弘志経済産業大臣、18日には田村憲久厚生労働大臣とオンラインで会談し、同様の要望活動を実施している。
三村会頭は、加藤官房長官との会談で、「経済財政諮問会議で最低賃金引き上げに向けた議論が行われていることで、多くの中小企業から不安の声が寄せられている」と懸念を表明。下方硬直性が強いという最低賃金の特徴を指摘し、「足下の厳しい経営環境、さらには、感染の再拡大に伴う景気の先行き不透明感を踏まえると、昨年度と同様に現行水準を維持すべきである」と強く主張した。
さらに、「最低賃金の主たる目的は労働者のセーフティーネット保証であるため、他の政策目的に用いるべきではなく、消費の向上には消費性向を高める政策に重点を置くべき」との考えを示し、一部に最低賃金制度を経済政策として用いる議論があることに不快感を示した。
加藤官房長官は、「経済を回復するためには賃金と景気との好循環をどうつくり上げていくかが極めて重要」と述べ、「賃金を上げる環境を整備することが必要であり、生産性向上に取り組む企業に対する支援、賃上げを図る中小企業への税制支援、下請け取引の適正化などに取り組んでいく」考えを表明。また、新型コロナウイルスの影響を大きく受ける業種の企業に対しては、「事業再構築への支援に万全を期していきたい」と述べた。
5月11日に会談した梶山経済産業大臣は、「最低賃金の引き上げには、生産性の向上が不可欠であり、経産省としては、中小企業が持続的な賃上げをできるような事業環境の整備に取り組む」と発言。「パートナーシップ構築宣言」の宣言企業増加や、大企業との取引環境の改善にも取り組む考えを示した。
同18日に会談した田村厚生労働大臣は、「厚労省としては、賃金を上げたいという思いがある一方、雇用を守らなければならないという使命もあるので、しっかりその両面を考えていく」と述べた。
今後、日商など3団体は、要望の実現に向け、関係各方面への働き掛けを強化。中央最低賃金審議会の場などあらゆる機会を通じて現行水準の維持を求めていく。
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