日本商工会議所の三村明夫会頭は4日、全国商工会連合会(全国連)の森義久会長、全国中小企業団体中央会の森洋会長と共に、首相官邸へ菅義偉首相を訪ね、3団体連名による「最低賃金に関する要望~コロナ禍の厳しい経済情勢を踏まえ、『現行水準の維持』を~」手渡し、要望内容と、全国の中小企業が置かれている厳しい状況を説明し、その実現を強く求めた。日商の三村会頭ら3団体首脳は、5月27日には西村康稔経済財政担当大臣にも要望書を直接手渡し、最低賃金の引き上げに反対の意向を表明している。
三村会頭は、菅首相との会談で、経済財政諮問会議で議論されている「賃金水準の引上げを通じた日本経済の底上げ」については、その重要性に異論はないとの考えを表明。一方で、「コロナ禍で多くの中小企業・小規模事業者が経営危機に直面している状況下において、赤字企業にも一律に強制力を持って適用される最低賃金を引き上げることは慎重であるべき」と述べ、今年度は最低賃金の現状維持を強く求めた。
また、現下の厳しい経済情勢について、「中小企業の借入金返済負担」「女性の非正規雇用への影響」「労働分配率の推移」「廃業検討率」などの具体的なデータに基づいて説明。
「このタイミングでの引き上げは、政府による中小企業・小規模事業者の切り捨てのメッセージと受け止められることが懸念される」と述べた。菅首相は提出した要望書、資料に丁寧に目を通し、三村会頭らの訴えに真剣に耳を傾けた。
3団体首脳は、5月27日にも内閣府で、経済財政諮問会議を所管する西村康稔経済財政担当大臣と会談。「最低賃金に関する要望」を手交し、その実現を求めている。
西村大臣との会談で三村会頭は、最低賃金の引き上げを容認する経済財政諮問会議における議論や政府首脳の発言に触れ、「全国の中小企業から多くの不安の声が寄せられている」と懸念を表明。中央最低賃金審議会が、経済財政諮問会議の議論に影響を受けて、「引き上げありき」の審議を行うことにも疑問を呈した。
西村大臣は、「経済の好循環の実現のために賃上げは重要」との考えを表明。「事業再構築補助金など企業の生産性向上を支援して、賃上げしやすい環境を整備していきたい」と述べた。
3団体は、5月11日に梶山弘志経済産業大臣、17日に加藤勝信内閣官房長官、18日には田村憲久厚生労働大臣と会談するなど、関係閣僚への直接の働き掛けを強めている。今後もあらゆる機会を通じて、政府・与党への要望活動を継続する。
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