日本商工会議所の三村明夫会頭は16日、都内のホテルで開催された一般社団法人内外情勢調査会全国懇談会で「コロナで考えた日本の課題と進むべき道」と題して講演した。三村会頭は講演で、「アフターコロナ時代のあるべき日本の姿」について、「国が社会課題解決と経済効率追求の同時実現を要求されているのと同様に、企業人も私益と公益の両立の模索を要請されている」との考えを強調した。
講演で、三村会頭は、「コロナは、社会全体の危機の共有プロセスを大幅に短縮する役割を果たした」と指摘し、「日本には、非常事態に対応するための仕組みと能力が大きく欠如していることが明らかになった」と危機感を表明。レジリエンス強化のためには、「日本経済に力がなければならない」と述べ、「日本を強い豊かな国にするために何をすべきか、再度真剣に考える時が来た」と強調した。
その上で、コロナ禍は改めて「デジタル化の遅れ」「人の動きの重要性」「グローバリゼーションの意味」「人口の集積リスク」を確認する機会となった点に触れ、米中対立の続く世界で「日本の立ち位置を明確にし、それを発信し、行動しなければならない」と主張。コロナで加速した地方分散化の動きについては、「地方創生の新しい動きにつなげなければならない」と述べた。
今後の成長戦略の基本的考え方については、「経済効率の追求とコロナで明らかになった社会課題を同時に解決すべき」と強調。1人当たりGDPの引き上げを国家目標に据え、国全体の生産性向上に向け、その主役となる企業、特に中小企業の生産性向上が重要との考えを示した。
また、中小企業の環境変化に対応した自己変革能力発揮に向けた課題としてデジタル化の重要性を指摘。さらに、多くの企業が「パートナーシップ構築宣言」に参加し、サプライチェーン全体で付加価値向上を目指す流れをつくることを呼び掛けた。
最後に、東京商工会議所初代会頭である渋沢栄一の「企業は利益を上げなければならない、と同時に公益にも配慮しなければならない、私益と公益は両立しうるものだ」との主張を紹介。「国が社会課題の解決と経済効率の追求の同時実現を要求されているのと同様に、企業人も、私益と公益の両立の模索を要請されている」との考えを示した。
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