日本商工会議所は6月30日、6月の商工会議所LOBO(早期景気観測)調査結果を発表した。6月の全産業合計の業況DIは、▲26・7と前月比で1・7ポイント悪化。先行き見通しDIは、▲26・8となり、厳しい見方が続いている。
米国・中国など海外経済回復に伴う需要増が続く半導体・電子部品関連や自動車関連の製造業のほか、防災・減災を中心とする公共工事に下支えされた建設業が堅調に推移した。一方、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の実施に伴い長引く活動制約が足かせとなっている小売業や観光関連のサービス業は、業況改善が見通せないことから、低調な動きが続いている。
また、相次ぐ食料品の値上げや鉄鋼などの原材料費上昇によるコスト増加が小売業・卸売業などを中心に幅広い業種で業況の押し下げ要因となっており、中小企業の景況感には鈍さが見られる。
先行き見通しDIは、▲26・8(今月比▲0・1ポイント)。ワクチン接種の加速化に伴う経済活動正常化や観光需要の回復のほか、東京オリンピック・パラリンピックの開催による経済効果に期待する声が聞かれる。
一方、活動制約の長期化に伴う製品・サービスの受注・売上減少による業績悪化の継続や、原油価格を含む原材料費の上昇による採算悪化への懸念などの不透明感は拭えず、中小企業においては、先行きに対して依然として厳しい見方が続く。
業種別の業況は、サービス業で改善も卸売・小売は悪化。建設、製造は横ばいと見方が分かれた。
建設業では、防災・減災などの土木関連を中心とした公共工事が下支えしているものの、設備投資をはじめとする民間工事が低迷したほか、木材・鉄鋼などの資材価格上昇による収益圧迫が押し下げ要因となり、ほぼ横ばい。「銅ベースが上昇している影響で電線・ケーブルの仕入れ価格上昇、採算を圧迫」(電気工事)など仕入れ価格上昇の声が聞かれる。
製造業では、米国・中国の経済回復に伴い、受注増が続く半導体・電子部品関連の売上が好調なものの、鉄鋼をはじめとした金属材料や小麦粉などの原材料の仕入れ価格上昇が幅広い業種の収益を圧迫し、ほぼ横ばい。「世界的な半導体業界の活況から、半導体製造装置部品の売上が増加傾向」(計量器測定器製造)などの声が寄せられている。
卸売業では、半導体・電子部品関連や自動車関連の製造業からの原材料・部品の受注は堅調なものの、例年より早い梅雨入りの影響で価格上昇が見られた農産物関連や飲食料品関連が全体を押し下げ、悪化。「夏に向けて、空調設備の受注が増加。ただし、冷媒配管の仕入れ価格が上昇しており、今後の採算悪化に注意」(電気機械器具卸)といった声がある。
小売業では、巣ごもり需要による家具・家電製品などの住まい関連の売上が堅調に推移するものの、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による客足減少が続き、悪化。また、飲食料品関連では、巣ごもり需要が盛況だった前年同月比では売上が悪化したとの声が聞かれた。
サービス業からは、コロナ禍でデジタル投資向けの受注が伸びるソフトウエア業が下支えしているほか、テークアウトに対応した一部の飲食店の売上が伸び、改善。ただし、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響から、宴会・観光需要が落ち込む飲食・宿泊業では、厳しい状況が続く。「企業からの非接触システムや省力化システムの受注が増えており、売上は改善」(ソフトウエア業)との声が聞かれた。
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