「下町育ちの再建王」の経営指南 世間話、無駄話の益

お客さまがご来店なさったとき、「いらっしゃいませ」と言うのと、「こんにちは」と言うのとでは、相手の心の温まり方が異なります。「いらっしゃいませ」と言われて「いらっしゃいました」というお客さまはいませんが、「こんにちは」には、ほとんどのお客さまが「こんにちは」と返してくれます。時候のあいさつなどはさらに効果的です。「今日も暑いですね」とか、「よく降りますね」とか、時候のあいさつには礼儀として返事をするのが習慣なのです。

一見どうでもいいようにも見えるあいさつは、世間話の入り口で、営業職はその無駄話でいかに相手の心を温めるかが腕の見せどころです。

私はシャイで緊張症なので初対面の人とは上手に話せませんでした。ディスカウントストア時代、お客さまの興味ある話題でひき付けることはできますが、最初の糸口をどうすればいいか、相手から近づいてもらうには、と考えた時期がありました。それで始めたことは、第一声で「こんちわ~」と、下町のおやじっぽく言うようにしてみたのです。この一言で、相手が自然体で近づいてくれるようになった気がします。

最近はリモートミーティングにおける会話について、工夫をしています。以前はコンサルティングでお邪魔すると、予定時間をオーバーすることがけっこうありました。というのも、長年のお付き合いの中、FACE to FACEでは、私の言葉に先方が引っかかって、「うちの場合では~なことがあるんですが、その場合はどうでしょう?」といった話が始まり、その日のテーマ以外に話が横にそれていくのです。無駄のように感じますが、この時間が営業成績のみならず、社員教育としてとても重要でした。スタッフの潜在意識の中にある疑問が口をつき、会話が広がり、私の話の中に「答え」が見つかる、といった体験はワクワク感があり、モチベーションにも関係しますから、相手先の会社にとって私と付き合うことは契約外のメリットなのです。しかし粛々と進むZoomコンサルでは、それが失われがちです。

Zoomでコンサルティング効果を目減りさせてはいけないので、数少ない会話の中からこぼれる、深層の悩みを拾い上げたいと思い、わざと脇道にそれた話をするなど、リモート下でのコミュニケーション力アップに取り組んでいるところです。

一見無駄で非効率に思われがちな会話が人の心を温め、結果、業績を生み出します。ネット通販が普通になり、人と直接交流しなくても何でもできる時代だからこそ、会話は人にとって一層大事なものになりました。一期一会、お客さまにとって、接客スタッフは数少ない会話の相手であることを意識してください。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

お問い合せ先

社名:株式会社 風土

TEL:03-5423-2323

担当:髙橋

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