「下町育ちの再建王」の経営指南 こまめなギアチェンジで世代交代を

父の経営するディスカウントストアで専務として仕事をしていたとき、「会社では父の意見に反対はせず、家で話をして意見を統一する」ということを鉄則としていました。弟が私の部下になったときも、「反対意見があっても会社では言うな」がルールでした。

家ではしょっちゅうやり合っていました。面と向かっては同意しなかった父が、翌日の会議では私の意見をそのまま話す、といったこともありました。家族だからこそ、すぐには納得したくない気持ちがあり、血のつながりも、時には厄介なものです。

船井総研でさまざまな会社を指導していると、社員の前で父親である社長に反対する息子の姿を見ることが何度もありました。二人の関係がギクシャクしてうまくいかない様子を、周囲は親子げんかを見るような感じで傍観しています。この件に関して、味方はお互いしかいないことを認識してください。

一番難しいのは、継ぐ側が自分の意見をどのように打ち出していくか、です。私の場合一度目はあまりに未熟でした。親父と方針が合わなかったとき、父は「そんなにやりたいんなら、お前が裸一貫でやってみろ」と言い放ち、私は「分かりました、一年間考えさせてください」と答え、その一年後に辞めました。

そのときの私に選択は、100か0しかありませんでした。一番驚いたのは父親自身だったでしょう。自分と同じクソ真面目で一本気な息子を追い詰め、後戻りできなくなってしまったのです。お恥ずかしい話ですが、これが最悪の世代交代失敗事例です。

それから30年以上が過ぎ、舩井幸雄に「どう変えても良い。小山君のやり方でやってもらいたい」と船井総研の社長を託されました。

私は、人の心理はそんな単純なものではないことは経験済みだったので、5回ギアチェンジして5年後には違う船井総研にしようと策を練りました。急に方向転換しても舩井会長が納得しないでしょうし、社員がついてこられないと考えたのです。実際は3カ月ごとに小さなギアチェンジをして、20回で別の船井総研につくり変えました。一回一回が小さな変革だったため、「まあ良いんじゃない」で、舩井会長も反対しませんでした。

5億3000万円の利益が最高だった船井総研は、私が社長になって2年9カ月後、10億円の利益を上げ、その3年後、利益は20億円を超えました。

世代交代が成功すると、世間の見方も変わり組織の価値は高まりました。私が経験した2回目の世代交代は、成功を収めることができました。

世代交代は企業生命にかかわる大事です。ギアチェンジで成功させてください。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

お問い合せ先

社名:株式会社 風土

TEL:03-5423-2323

担当:髙橋

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