日本商工会議所の三村明夫会頭は2日、定例の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大と中小企業の現状について、「LOBO調査の8月結果では、全ての業種で業況DIが悪化。コロナ変異株の急拡大の影響を受けた」と厳しい経済情勢に言及した。ワクチン接種については、「何らかのインセンティブが必要」と指摘。ワクチンパスポートの導入や、接種者に具体的なメリットを示すことを提案した。
日商のLOBO調査8月結果について、三村会頭は、「業況DI(全産業)は、8月は、全ての業種で悪化。コロナ変異株の感染急拡大の影響を受けた。地域別では、北陸信越を除いて、ほぼ全ての地域で悪化した」と説明。「債務の過剰感が高まり、多くの企業が借金の多さに不安を感じている。10月から最低賃金が引き上げられることに各地から悲鳴が寄せられている」と強調した。
一方で、法人企業統計調査の2021年4~6月期の設備投資について、資本金1億円以下の企業が増加していた点に触れ、「経常利益についても改善幅が大きい中小企業は業況が良いところと悪いところが混在している。二極化しているということだ」との考えを表明した。
コロナ禍で実施すべき対策などについては、「8月に菅総理がお越しになった際、われわれは、ワクチン接種の加速化、検査・医療提供体制の拡充を要望した」と述べた上で「ワクチン接種を進めるためにはインセンティブが必要だ」と強調。「諸外国でも実例があるワクチンパスポートの導入や、適切な感染対策を実施し第三者認証を受けた店舗での営業時間短縮・酒類提供の制約緩和、また、ワクチン接種者はイベントに参加できるといった具体的なメリットを受けられるような工夫が必要ではないか」との考えを表明した。
全国の商工会議所で実施している職域接種については、「ワクチンの供給不足で当初の予定から1カ月以上遅れたが、8月中旬から順次スタートしている。現在、105商工会議所が61万人の中小企業の従業員などへの接種を実施している」と説明。また、家計調査で、高齢者世帯の消費支出の減少幅は、他の年齢層に比べて小さい点に触れ、「ワクチン接種が進むことで消費の落ち込みを抑えることができるかもしれない」と述べ、ワクチン接種の加速化の重要性を指摘した。
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