日本商工会議所は2月17日、社会資本整備専門委員会の下に設置した「地域BCM研究会」が取りまとめた「商工会議所を核とした地域の防災・減災対策の推進に関する中間報告書」を公表した。報告書は、各地商工会議所に対する調査・ヒアリングを通じ、これまで激甚災害などの発生の際に、被災企業支援や産業復興について商工会議所が担ってきた役割や、その経験を通じて得られた課題を整理。各地商工会議所に報告書の活用を働き掛けるとともに、地域における防災・減災に対する意識の醸成と共有化を促す。
また、頻発化・激甚化する災害に対し、行政のみならず、地域一丸となって防災・減災対策の一層の推進を図ることが必要と指摘。商工会議所を核とした多様な主体との連携による、レジリエントで豊かな地域経済社会の実現に向けて取り組む地域を広げていくことを目指す。
災害発生時における商工会議所の支援実績と課題については、実際に災害を経験した商工会議所からのヒアリング結果などを基に、整理して掲載。かつてない規模で多くの地域が被災した東日本大震では、広域災害を想定した県連やブロック連合会レベルでの事前のBCPや防災協定の必要性が大きな課題となった。
熊本地震では、公的支援のみならず、保険・共済が役に立ったとの声が寄せられたほか、西日本豪雨で会員企業に影響が出た倉敷商工会議所では、直接の被害はなかったものの、被災地支援から得た経験を踏まえ、BCPの見直しを行い、ハード面でも防災機能を備えた新会館を建設。現在、直面している、新型コロナウイルス感染症への対応についても自然災害と並ぶ重大なリスク要因として、感染症を想定したBCPの必要性を提示している。
また、報告書では、これまでの災害から得た教訓などを踏まえ、各地の事前防災の取り組み事例を交えながら、今後の課題と対応策を提示。災害発災時には、商工会議所が被災企業支援の中核的な役割を担うことが想定されるため、まずは地域内で、日頃から、行政や会員企業と連携し、商工会議所自身のBCP対策と策定後の定期的なチェック(運用訓練)など事業継続体制を構築する必要性を強調した。
また、南海トラフ地震や首都直下地震などの広域災害を想定。遠方地域の商工会議所間や連合会による対ロ支援など広域的な支援体制などの課題と対応策も示した。
BCP策定、会館の強じん化、広域連携などについては、各地商工会議所の具体的な取り組み事例を提示。日商としてのサポート機能の強化の方向性も示した。
商工会議所を核としたレジリエントで豊かな地域経済社会の実現に向けては、公民連携による地域一丸となった防災・減災対策の必要性を強調。公(国・地方自治体)と民間とがそれぞれの役割を果たしつつ、公民の体制(省庁間の縦割り排除、国・地方自治体間の連携促進、公民連携など)を強化することで「防災の日常化」(防災の取り組みが、日常生活や経済活動に組み込まれる)を図るよう求めている。
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