政府は8日、首相官邸で新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄首相)を開催し、科学技術分野の成長戦略などについて議論した。会議に出席した日本商工会議所の三村明夫会頭は、カーボンニュートラルについて、産業競争力の確保との両立に向けた研究開発の必要性を指摘。岸田文雄首相は、今春にまとめる新しい資本主義の実行計画に盛り込む科学技術政策について、特に「量子技術」「AI」「再生・細胞医療・遺伝子治療」「バイオものづくり」「クリーンエネルギー」の5分野に重点的な投資を行う考えを表明した。
三村会頭は、科学技術立国に向けては、資本主義経済下にあっても、適切な政府の関与が有効であると指摘。テーマの優先順位については、「重要な社会課題の解決に資する領域への重点化を図ることが、新しい資本主義の方向性にも合致する」と述べた。
特に、国を挙げて達成すべき目標である「カーボンニュートラル」の追求と産業競争力の確保に関して、「『二兎を追う』ための研究開発の推進が必要」と強調。日本が主要国の中でも、エネルギー資源に乏しく、再生可能エネルギーを生み出す自然条件などの点でも不利な条件にある点に触れ、「グリーン化によって電力コストが、産業の国内立地を許さぬほどに高まる恐れもある。この状況を技術で逆転しなければならない」との考えを示した。
そのために、原子力の位置付けを明確にするとともに、「コストや安全性に優れる小型原子炉などの研究開発にしっかり取り組むという、柔軟で現実的な対応をとるべき」との考えを表明。カーボンリサイクル、バイオなどさまざまな有望なアプローチについて、「政府として研究開発をしっかりと後押しすべき」と強調した。
また、国際リニアコライダー(ILC)の東北誘致への取り組みについて、「新しい資本主義、デジタル田園都市国家構想、あるいは震災復興のシンボルとなるべきプロジェクトだ」と指摘。「早期に、省庁を超えた高次元の政治判断を図り、ILCの誘致に向けた国際協議開始の意思表明を発出していただきたい」と述べた。
会議に出席した岸田首相は、「科学技術は、社会的価値を追求する手段として、新しい資本主義実現の重要な柱だ」と強調。特に、「量子技術」「AI」「再生・細胞医療・遺伝子治療」「バイオものづくり」「クリーンエネルギー」の5分野について、「日本が世界をリードしていく明確な決意の下、大胆かつ重点的な投資を行う」との考えを示した。
また、研究開発投資の抜本強化の必要性を強調。「この春にまとめる新しい資本主義の実行計画に、科学技術政策についての強い国家意志を盛り込んでいきたい」との方針を示した。
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