1 はじめに(略)
2 基本的考え方の位置付け(略)
3 対象債権者の範囲の明確化
(1)リース債権者
・中小企業は、ファイナンス・リース契約またはオペレーティング・リース契約(以下「リース契約」という)を締結し、設備投資などを行うことが多い。廃業時における保証債務の整理においては、主たる債務者が廃業するに当たり、事業に使用しているリース対象資産を処分することが想定され、リース契約に係る保証債務が顕在化することが想定される。そのため、廃業時における保証債務の整理においては、リース契約に係る保証契約を締結したリース債権者は、ガイドライン上の対象債権者になり得るため、保証債務の整理に関する協議を求められた場合には、ガイドラインに基づく対象債権者として参加することが強く求められる。
(2)固有債権者
・保証人に住宅ローンを含むその他の固有の債務(以下「固有債務」という)が存在し、当該固有債務が保証人の弁済計画の履行に重大な影響を及ぼす恐れがある。そのため、廃業時における保証債務の整理においては、固有債務の債権者(以下「固有債権者」という)は、ガイドラインに基づく対象債権者になり得るため、債務整理に関する協議を求められた場合、ガイドラインの趣旨を考慮しつつ、誠実に対応することが望ましい。
協議の結果、当該固有債務が弁済計画の対象に含まれる場合は、当該固有債権者は、保証人の資産の処分・換価により得られた金銭の配分の際の対象債権者に含まれる。
・また、固有債権者は、ガイドラインの保証債務整理の対象債権者に含まれない場合であっても、保証人から当該固有債務の整理に関する協議を求められたときは、誠実に対応することが期待される。
4 対象債権者における対応の明確化
(1)ガイドラインに基づく保証債務の整理への誠実な対応
・対象債権者は、保証人の破産の回避に向け、主たる債務者および保証人からガイドラインに基づく保証債務の整理の申し出を受けた場合には、主たる債務者および保証人が財産開示に非協力的ではないか、対象債権者に経済合理性がないかなどの合理的不同意事由の有無につき、ガイドライン第7項(1)(イ)から(二)に基づき判断し、主たる債務者および保証人の意向を真摯に検討の上、ガイドラインに基づく保証債務の整理に誠実に対応する。
(2)保証債務の履行
・対象債権者は、ガイドライン第7項(3)③やガイドラインQA第7項(3)「③保証債務の履行基準」(Q.7-13ないしQ.7-21)に従い、廃業手続きに早期に着手したことによる保有資産などの減少・劣化防止に伴う回収見込額の増加額について、合理的に見積もりが可能な場合は、当該回収見込額の増加額を上限として残存資産に含めることを検討するなど、保証債務の履行請求額を判断する。
・また、対象債権者は、保証人に自由財産を超える保有資産がないなど、保証人の保証履行能力の状況によっては、保証人が対象債権者に対し、弁済する金額が無い弁済計画(いわゆるゼロ円弁済)もガイドライン上、許容され得ることに留意する。
5 主たる債務者および保証人における対応
・主たる債務者および保証人は、廃業を検討するに至る以前において、法人と経営者との関係の明確な区分・分離に向けた取り組み、財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示などによる経営の透明性確保に向けた取り組みや、財務状況および経営成績の改善を通じた返済能力の向上に向けた真摯(しんし)な努力を行っていることが求められる。
・主たる債務者は、廃業の検討に至った場合、直ちに対象債権者に申し出るとともに、財産状況など(負債の状況を含む)について適時適切に開示する。また、支援専門家に相談するなど、従業員・取引先を含めた地域経済への影響も踏まえ、迅速かつ誠実に対応するものとする。
・主たる債務者は、廃業を決断するに当たっても、支援専門家に相談するなどして、事業の売却先を検討するなど、当該地域における雇用を守るための取り組みについても、可能な範囲で検討を行うものとする。
・保証人は、弁済計画案の策定に当たり、誠実かつ丁寧に表明保証を行うとともに、対象債権者からの情報開示の要請に対して正確かつ丁寧に信頼性の高い情報を可能な限り早期に開示・説明する。
6 支援専門家における対応
・支援専門家は、主たる債務者からの廃業の相談を受けるに当たり、破産手続きを安易に勧めるのではなく、損益および財産の状況、業績と資金繰りの見通しなどの主たる債務者の経営状況や事業売却の可能性、対象債権者との協議状況、対象債権者の経済合理性、従業員・取引先を含めた地域経済への影響なども考慮したうえで、主たる債務者の意向を踏まえて、債務整理の方法を検討することとする。
・特に、主たる債務者がやむを得ず破産手続きによる事業清算を行うに至った場合であっても、支援専門家は、保証人に、破産手続きを安易に勧めるのではなく、対象債権者の経済合理性、固有債権者の有無や多寡、保証人の生計維持、事業継続などの可能性なども考慮したうえで、保証人の意向を踏まえて、ガイドラインに基づく保証債務の整理の可能性を検討することとする。
・また、支援専門家は、対象債権者との間では、望ましい情報開示の内容・頻度について認識を共有するとともに、保証人に対し、資力に関する情報を誠実に開示することの重要性を理解させるため、自ら開示し、その内容の正確性について表明保証を行った資料の状況が事実と異なることが判明した場合(保証人の資産の隠匿を目的とした贈与などが判明した場合を含む)には、免除した保証債務および免除期間分の延滞利息も付した上で、追加弁済を行うことになることを十分説明することとする。
・支援専門家は、保証人に固有債務が存在し、保証人の弁済計画の履行に重大な影響を及ぼす恐れがある場合、以下の(①②の)対応を検討することとする。
①保証人の固有債務が過大で、保証人の弁済計画の履行に重大な影響を及ぼす恐れのある固有債権者については、対象債権者に含めることができることを踏まえ、対象債権者の範囲を検討する。
②保証人に、基準日以降に発生する収入が見込まれる場合には、事案に応じ、当該収入を固有債務に対する返済原資とした個別和解を検討する。
・支援専門家は、保証人に自由財産を超える財産がないなど、保証人に保証履行能力がないために弁済が見込めない場合において、主たる債務者の事業清算手続きが長期化しているときは、主たる債務者の事業清算手続きと並行して保証債務の整理を行うことを検討することが望ましい。
7 その他
・基本的考え方は、2022年4月15日までに中小企業団体、金融機関団体及び日本弁護士連合会などを通じ、関係者に広く周知を図るとともに、所要の態勢整備に早急に取り組む。
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