日本・東京商工会議所は5日、「最低賃金引き上げの影響および中小企業の賃上げに関する調査」の結果を取りまとめ、公表した。今年の最低賃金額の改定について、「現状維持」が36・6%で最多。次いで「1%超~3%以内の引き上げ」(20・9%)、「1%以内の引き上げ」(13・6%)、「3%超の引き上げ」(7・2%)、「引き下げ」(3・3%)の順で多くなっており、「引き上げ」の合計(41・7%)が「現状維持」「引き下げ」の合計(39・9%)を1・8ポイント上回った。
最低賃金については、2016年以降、一昨年を除き、政府方針により、明確な根拠が示されないまま、中小企業の経営実態とはかけ離れた3%台の大幅な引き上げが行われてきた。昨年は、中小企業3団体の連名による「最低賃金に関する要望」を政府に提出。コロナ禍の厳しい経済情勢を踏まえ、「現行水準の維持」を要望したが、全国加重平均で28円増の大幅な最低賃金引き上げ(902円→930円)が行われたことで、直接的な影響を受け、賃金を引き上げた企業の割合は40・3%に達している。
現在の最低賃金額に負担を感じている企業(「大いに負担になっている」「多少は負担になっている」の合計)は65・4%で、業種別では、コロナ禍で大きな影響を受けている「宿泊・飲食」で90・9%と最多。次いで、「介護・看護」(81・4%)、「小売」(81・4%)、「運輸」(79・4%)など労働集約型産業で負担感が大きい結果となっている。
今年の最低賃金額の改定について、「引き下げるべき」「引き上げはせずに、現状の金額を維持すべき」と回答した企業の割合の合計は39・9%と、前年調査から16・7ポイント減少。一方、「引き上げるべき」(「1%(9円程度)以内の引き上げとすべき」、「1%(9円程度)超~3%(28円程度)以内の引き上げとすべき」、「3%(28円程度)超の引き上げとすべき」の合計)と回答した企業の割合は、前年調査から13・6ポイント上昇して41・7%となり、「引き下げるべき」と「現状維持すべき」の合計を上回った。
22年度に「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は45・8%で、このうち、69・4%が「業績の改善がみられないが賃上げを実施(防衛的な賃上げ)予定」と回答。賃上げ理由については、「社員のモチベーション向上」(85・4%)や「人材の確保・採用」(68・6%)と回答した企業の割合が高い結果となった。
一方で、賃上げを見送る予定(引き下げる予定)と回答した企業の割合は8・5%で、その理由については、「自社の業績低迷、手元資金の不足」(60・6%)、「人件費増や原材料価格上昇などの負担増」(56・2%)、「景気の先行き見通しが不透明であるため」(47・8%)、「賃上げより雇用維持を優先するため」(43・4%)の順で多くなっている。
調査は、全国47都道府県の中小企業6007社を対象に、22年2月7~28日に実施。437商工会議所を通じて3222社から回答を得た(回答率53・6%)。
詳細は、https://www.jcci.or.jp/research/2022/0405160000.htmlを参照。
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