コロナ禍も3年目に入り、世界的な需要の高まりから、幅広い分野で物価が上昇しています。それに加え、ロシアへのウクライナ侵攻に対する制裁により、ガソリンや小麦、レアメタルなどの価格の上昇が、景気回復に影を落としています。ロシアへの制裁は少なくとも、あと数年続くでしょうから、エネルギー問題はより深刻です。
わが国では1990年代から、平均年収がほぼ同水準で推移する一方で、生活するための経費の値上げは、ほとんどありませんでした。30年間賃金が上がらなくても、デフレ経済下で、どうにかやりくりすることができたわけです。しかし、食料品や光熱費などの生活必需品の価格が軒並み上昇すると、影響が出ます。
コロナ禍からの回復に伴い、米国では人手不足から賃金が上がっているが、賃上げしても、消費者物価指数がそれを上回る値で上昇している状況です。日本の物価上昇は米国ほどではないにしろ、景気の悪い中、急激な円安が原料価格をさらに押し上げているので、給料は増えないまま、物価の上昇は継続するでしょう。この経済現象をスタグフレーションと呼びますが、今私たちはその入り口に立っています。
不景気下でのインフレは、1973年の第一次オイルショックを機に陥った深刻な不況以来、約50年ぶりの現象です。当時はその後にバブル景気が始まりましたが、現在そのような明るい兆しはありません。
こういう経済の状態や世界情勢は、若者の心理にも影響します。ミレニアル世代、Z世代はバブルの後しか知らないので、物心つく頃からずっとデフレです。彼らが必要以上には頑張らない要因に、デフレ経済の影響があります。マズローの欲求階層論でいうと、生理的欲求、安全の欲求が満たされることは当然であり、求める必要がなかったわけです。しかしここにきて前世紀さながらの戦争が始まり、その理不尽な状況を直視することで、彼らの価値観は揺らいでいます。その上、生活苦を、身を持って体験することは、彼らの生き方を変えるきっかけになるかもしれません。例えば、子どものために残業をするようになり、昇給のためにプライベートでも仕事を考えるようになるかもしれません。
私たちは自分では解決できない問題に囲まれて生きています。状況に飲み込まれず、かがみこんで覗(のぞ)いたり、爪先立ったりしながら見通しを立て、ビジネスを維持するのが、経営者の使命です。
世界の全ての出来事は私たちの仕事に直結しており、社員や顧客の心理を形成している現実を意識して、いっそう注意深く情報を読み解いてください。
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社名:株式会社 風土
TEL:03-5423-2323
担当:髙橋
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