インスタで注目が スキー場再生へ期待
不動産会社に勤める知人が「まちづくりは面白いね」と夏の休暇中に体験したことを写真付きで送ってくれました。そこに写っていたのは岩手県安比高原スキー場に広がる幻想的なアート体験の光景でした。ネットで調べてみると、写真家の蜷川実花さんが制作したアート展が開かれ、老朽化や利用客の減少で使われていなかったザイラーゴンドラ山頂駅舎をアート空間として活用。水を張った床の上に、高さ2・5メートルのスクリーンを設置。安比高原などで撮影された色鮮やかな四季の花や雪景色、チョウの映像を流しており、水の上を歩くこともでき、写真や映像で自然の美しさが表現されたイベントになっていたようです。
安比高原は前職の勤務先が経営していたこともあり、閑散期に研修参加で訪れたことが何回もあります。当時は年間150万人が訪れる人気のスキー場でした。ただ、夏場の集客には苦戦していたので社内で活用したのでしょう。ところがバブル崩壊後あたりからスキー熱の低下で来客数は減り続け、2021年は約22万人まで減少。老朽化した施設の改修コストもままならなくなり、マイナスのスパイラルに落ち込んでいたようです。
そんな状況からの再生に向けて(冬ではなく)夏の集客企画に取り組んだのですね。幸いにもアートイベントは好評で多くの来場者でにぎわい、インスタグラムなどで映える写真がアップ。注目度が上がり、冬の予約にもつながりつつあるとのこと。自然とアートの共生は、都市部から人を導く新たな同線として期待できる話だと感じました。
観光収入増目指し全国に広がるアート展
アートと自然といえば、瀬戸内国際芸術祭が行われる直島・豊島(香川県)などは、日本にとどまらず世界からの来客があるくらいになっているようです。コロナ前と比べると2割くらい減少したしたようですが、夏会期の開幕11日間の来場者数をまとめたデータによると、来場者数は約7万6000人。ちなみに香川県と岡山県の12の島と二つの港を舞台に行われる日本最大級の芸術祭として、コロナ前のように春、夏、秋の三つの会期に分けて合わせて100日超の日程で開催ができれば、地域の大きな観光収入につながります。
アートと自然の共生をテーマにしたイベントは全国各地で数多く開催されるようになりました。
例えば、九州・佐賀県では、ボルボとチームラボがコラボレーションした自然と時間を主たるテーマに、50万平方メートルにおよぶ御船山楽園をアート空間に変えたアート展が開催されています。一度、訪ねて、体感してみましょう。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)
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