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中小企業における消費税の価格転嫁に係る実態調査(第2回)結果概要 業種・規模で対応に差

日本商工会議所は10月30日、「中小企業における消費税の価格転嫁に係る実態調査(第2回)調査結果」を取りまとめ、公表した。調査結果によると、消費税引き上げ分の転嫁状況は、第1回調査(平成26年5月)とほぼ同じ結果で、約6割の事業者が全て「転嫁できている」と回答。一方で、「全く転嫁できていない」事業者は約1割となっている。平成9年の消費税引き上げ時(3↓5%)に比べると、「転嫁できている」は約2割増加しており、日商では、前回引き上げ時に比べ「より円滑な転嫁が実現している」と分析している。取引形態別では、BtoBに比べ、BtoCの事業者の方が「転嫁できていない」との回答が多く、業種別で見ても小売業・飲食業で「転嫁できている」との回答が約半数と、転嫁が比較的困難である事業者が多い結果となっている。

調査は、今年4月の消費税率8%への引き上げについて、中小企業における価格転嫁の状況を把握するために、各地商工会議所管内の中小企業3201事業者に商工会議所の経営指導員、職員がヒアリングを行ったもの(回収率85・0%)。調査期間は9月1~25日。第1回調査と約8割が同じ事業者が回答し、2割の事業者を入れ替えてヒアリングを行った。

転嫁の実態

できないは1割 小規模ほど苦戦

消費税引き上げ分の転嫁の状況について

消費税引き上げ分の転嫁については、約6割の事業者が全て「転嫁できている」と回答している。「一部転嫁できている」と合わせて、約9割の事業者が転嫁できている結果となっている。一方で、「転嫁できていない」が10・9%となっている。第1回の調査に比べ、ほぼ同様の傾向となっている。

平成9年の消費税引き上げ時(3↓5%)の転嫁の状況(「中小企業における消費税の転嫁に係る実態調査」平成23年度(日商)は、「転嫁できた」が40・0%、「一部転嫁できた」が21・3%、「転嫁できなかった」が38・6%であった。平成9年の消費税引き上げ時に比べ、今回の消費税引き上げでは、「転嫁できている」事業者が20%以上増加、「一部転嫁できている」事業者と合わせて約30%増加しており、前回の消費税引き上げ時(3↓5%)に比べ、より円滑に転嫁が実現している。

取引形態別では、「転嫁できている」と回答している割合は、BtoB事業者で7割(70・9%)を超え、BtoC事業者は約5割(54・5%)となっている。第1回調査と同様に、BtoB事業者よりBtoC事業者の方が、転嫁がより困難であるとの結果になっている。

一方で、第1回調査に比べて、BtoB事業者は「転嫁できている」割合が約4ポイント減少している。BtoB事業者では、事前に予測した売上高との比較で「想定通り」との回答が最も多く、第1回調査と大きく変わりがない一方で、転嫁できない原因として「競合相手との競争が厳しい」との回答が増加していることから、競争環境の悪化により「転嫁できている」割合が減少したのではないかと推測される。

売上高別では、売上高1億円超の事業者の約7割(74・5%)が「転嫁できている」と回答している一方で、売上高1千万円以下の事業者は約5割(50・2%)にとどまっている。売上高が小さい事業者ほど「転嫁できていない」との回答が多い結果になっている。第1回調査に比べ、ほぼ同様の傾向となっているが、売上高1億円超の事業者は「転嫁できている」割合が増加しているのに比べ、売上高1億円以下の企業は「転嫁できている」割合が減少している。

「転嫁できている」と回答した事業者では、その理由について「商品・サービスの特性」との回答が最も多い(25・8%)。一方で、「転嫁ができない」と回答している事業者では、その原因を「消費者の低価格ニーズへの対応」(38・5%)、「競合相手との競争が厳しい」(38・2%)との回答が多い結果となった。第1回の調査に比べ、「転嫁できていない」事業者では、「消費者への低価格ニーズへの対応」との回答が約8ポイント増加している。

「転嫁できている」事業者と「転嫁できていない」事業者を比較すると、「転嫁できている」事業者は「外税取引・表示」や「消費者ニーズをとらえている」を理由として挙げている割合が高い。

価格設定

「一律引き上げ」51% 外税選択は上乗せ容易

消費税引き上げ時における商品・サービスの価格設定の手法

消費税引き上げ時における商品・サービスの価格設定の手法についての設問では、「全ての商品・サービスの価格を一律で3%引き上げている」(50・7%)との回答が最も多く、「商品・サービス毎にメリハリをつけて、利益を確保できるよう価格設定を行っている」(14・5%)と合わせて、6割を超える事業者が消費税引き上げ分を価格設定で乗り切る工夫をしていることが推測される。

一方で、「全ての商品・サービスを一律で3%引き上げられないので、一部は価格を据え置いている」(22・1%)、「全ての商品・サービスの価格を据え置いている」(12・7%)との回答は約3割(34・8%)となっており、第1回の調査に比べ、ほぼ同様の傾向となっている。

「全ての商品・サービスの価格を一律で3%引き上げている」と回答した事業者は、BtoB事業者ほど多い。一律に3%引き上げたと回答した事業者は、その理由として、「外税取引や税抜き表示なので、本体価格に消費税分を上乗せして取引先に請求できるため」との回答が最も多く(73・6%)、外税取引や表示を選択している事業者は、一律で消費税引き上げ分を価格に上乗せしている結果となっている。

BtoC事業者は、価格設定の理由として、「顧客や消費者が価格に敏感なため」、「競合相手や、同業他社、近隣店舗の状況の動向を確認しているため」との回答が多く、消費者の動向や近隣店舗との競争により、商品ごとの販売戦略から価格を設定していることが推測される。

「全ての商品・サービスの価格を据え置いている」理由として、「販売数量の維持や増加によって、事業全体で売上や利益を確保しているため」と回答している事業者はごくわずかであり、価格戦略上価格を据え置いているのではなく、消費者の動向や近隣店舗との競争により、やむなく価格を全て据え置いていると推測される。

再引き上げ問題

「経済対策を」43% 3割超が金融支援望む

10%引き上げ時の転嫁について

消費税率が10%に再引き上げとなった場合の転嫁の見込みについては、「現在、消費税引き上げ分を転嫁できており、今後も転嫁できる」(37・9%)との回答が最多。約4割の事業者が今後も全て転嫁できると見込んでいる。

一方で、「転嫁できるかどうかわからない」が32・2%、「現在、消費税引上げ分を価格に上乗せできておらず、今後も転嫁できない」が8・1%となり、転嫁できない事業者は1割未満で、約3割が現時点では分からないと回答している。第1回の調査に比べ、ほぼ同様の傾向となっている。

現在、「転嫁できている」事業者ほど、10%引き上げ時に転嫁できるとの回答している割合が高い。取引形態別では、BtoB事業者は、約7割が今後も転嫁できると回答している。一方で、BtoC事業者では約5割程度の回答にとどまっており、現在の価格転嫁の状況と同様の傾向となっている。

政府への要望としては、「景気浮揚のための経済対策予算の策定」(43・1%)が最も多く、続いて「政府による消費者向け広報の徹底」(35・6%)、「資金繰りなど金融支援の強化」(31・9%)となっている。第1回の調査に比べて、ほぼ同様の結果となっている。

売上への影響

「想定内」は6割に

事前に予測した売上高との比較

消費税引き上げ後の売上(税抜き)の状況は、「横ばい」が59・5%と最も多く、「減少」が31・0%、「増加」が9・5%となっている。第1回調査に比べて、「増加」、「減少」の割合が増加し、「横ばい」の回答が減少しており、消費税率引き上げ後約半年を経て、徐々に売上高の明暗が分かれてきたと推測される。

事前に予測した売上高との比較は、「想定どおり」(59・1%)との回答が最も多く、消費税引き上げ後の売上の影響はおおよそ想定内の範囲に収まっていると推測される。第1回調査に比べて、「想定どおり」の事業者はほぼ横ばいとなっている一方で、「わからない」との回答が減少し、「想定を上回った」、「想定を下回った」事業者の割合は増加している。

業種別の状況

小売、飲食は約半数 根強い低価格ニーズ

業種別の消費税引き上げ分の転嫁の状況

競合相手と競争激化も

業種別では、「製造業」(70・4%)、「建設業」(69・9%)、「卸売業」(71・4%)などBtoBの業種が「転嫁できている」との回答が多い一方で、「飲食業」(49・0%)、「生活関連サービス業」(51・0%)、「小売業」(53・3%)などBtoCの業種は、「転嫁できている」との割合が低い結果になっている。

小売業、飲食業、生活関連サービス業で転嫁できていない理由として、「消費者の低価格ニーズへの対応」が最も多く、続いて「競合相手との競争が厳しい」が多い。商品・サービスの価格を据え置いている事業者ほど、売上高が減少している割合が高く、最終的に転嫁できていない割合が高い。

消費税引き上げ後の売上(税抜き)の状況は、全ての業種で「想定通り」との回答が最も多い。第1回調査に比べて、「建設業」、「卸売業」で「想定を上回った」との回答が約6ポイント増加している一方で、「小売業」、「飲食業」で「想定を下回った」との回答が約5ポイント増加している。

価格設定の手法と転嫁の状況を業種別に見ると、小売業、飲食業、生活関連サービス業では、全ての価格を据え置いている事業者は、売上高が減少している割合が高く、転嫁できていない割合も高い。

小売の43%で売上減少

小売業では、売上高は引き上げ前と比べて「横ばい」が最も多い(全体で50%)。一方で、売上高が減少していると回答している事業者も4割を占めている(全体で43%)。

一部または全ての価格を据え置いている事業者が価格設定を行った理由としては、「消費者が価格に敏感」(一部65%、全て72%)が最も多く、続いて「競合相手の動向」(一部35%、全て28%)、「値札の貼り換えや、経理処理など、事務負担の問題がある」(一部25%、全て17%)との回答が多い。

売上が減少した事業者のうち約4割が、転嫁の原因分析として「駆け込み需要の反動減」と回答。そのうち、転嫁できている割合は4割となっている。

価格据え置き飲食の51%

飲食業では、他業種と比べて、「全ての商品の価格を引き上げている事業者」(24%)の割合が少ない。「一部、または全ての価格を据え置いている」事業者が約半数(一部30%、全て21%)を占める。

一部または全ての価格を据え置いている事業者が価格設定を行った理由としては、「消費者が価格に敏感」(一部86%、全て76%)が高く、続いて「競合相手の動向」(一部25%、全て36%)との回答が多い。

転嫁できていない理由としては、「消費者の低価格ニーズへの対応」(43%)、「競合相手との競争が厳しい」(43%)との回答が多い。一方で、転嫁できている理由としては、「サービスの特性」(28%)、「消費者ニーズを上手く捉えることができている」(28%)との回答が多い。

生活関連サービス業では、一部または全ての価格を据え置いている事業者が価格設定を行った理由としては、「消費者が価格に敏感」(一部74%、全て74%)が高く、続いて「競合相手の動向」(一部45%、全て32%)との回答が多い。

転嫁できていない理由として、「消費者の低価格ニーズへの対応」(43%)との回答が多い。一方、転嫁できている理由として、「サービスの特性」(30%)、「消費者ニーズを上手く捉えることができている」(22%)との回答が多い。