私たちを取り巻く環境は成熟し、多様性が高まるばかりです。不安定な経済を背景として、ミレニアル世代、Z世代がビジネスの主流となりダイバーシティが戦力となっていく社会。それに合わせて企業も変化を求められています。
企業間取引の選択ポイントとして社会貢献度を重要視するようになり、社員も同様に、自分が働く企業の社会貢献意識を見ています。消費者も、社会的存在価値の高い企業の商品・サービスを利用することで、自分も貢献したいと考えるようになりました。
注目されているのは企業の存在意義、パーパス(Purpose)です。パーパスは、自分たちが何のために働いているのか、信念を持った行動指針で、いわば〝志〟を指すものです。『パーパス経営』とは、自社の存在意義を明確にし、どのように社会に関与していくのかを掲げる経営のことです。〝志〟を同じくする人間の集団であれば、どれほど多様性ある人の集まりでも企業文化を醸成することができ、社会変化を乗り越える強さを生み出せるに違いありません。
2016年7月、米国のある調査機関がビジネスマン3000人に行った調査によると、約半数が「パーパス経営の会社で働けるなら、給与が下がってもいい」と答えています。
日本でも、既に多くの企業がパーパスを表明しています。例えば、ソニーのパーパスは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」。サイバーエージェントは「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破(だは)する」です。
規模に関係なく、自社のパーパスを考えてみてください。表明することで内外に好意的理解が広がるでしょう。
実はパーパスは新しいものではありません。講道館柔道の創始者・嘉納治五郎さんは、技のみならず、その志の第一義に『精力善用』を掲げています。
「柔道の根本義は、精力の最善活用である。言い換えれば、善を目的として、精力を最有効に働かせることである。
それでは、善は何か、と言うに、団体生活の存続発展を助くるものは善で、これを防ぐるものは悪である。(略)そしてこの団体生活または社会生活の存続発展は、相助相譲〔そうじょそうじょう・互いに助け、互に譲る〕・自他共栄によって達成せられるのであるから、相助相譲・自他共栄もまた善である」。と、講道館HP、師範の言葉にあります。氏は柔道を通して明解なパーパス教育を行っていたのです。
ところで、柔道家として知られるプーチン大統領は講道館とゆかりがあるようですが、このパーパスを理解していないことは、私もはなはだ残念に思います。
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