今回は私が32歳の頃、実家のディスカウントストアで仕事をしていた時に考えた、〝勢いの理論〟を紹介したいと思います。
このタイトルだと、勢いのある時には目いっぱい急成長した方が良い、という意味に取られがちですが、その逆の意味で、「目いっぱい走らずとも、立ち止まらない」。これが私の〝勢いの理論〟です。
人は急速に成長しなくても、努力さえ重ねれば、間違いなく成長します。焦りは禁物で、周囲を確認せずに目いっぱい走ってしまうとバーンアウトする場合もあるので、成長は一歩一歩、が良いのです。
実家のディスカウントストアで貴金属を担当していた時、金価格が一気に高騰したことがあります。急騰前に偶然、ネックレスを3000本ほどつくって売ろうと準備していたので、気が付くと、一気に億単位の儲(もう)けを得たのでした。私の人生で初めてのボロ儲けに「こんなこともあるのか……」と商売の不思議を感じながら、翌年それまで支払ったことのない多額の税金を納めました。イケイケ気分でヤッターと思っていたのですが、その後の予定申告までは想定しておらず、大変な事態に陥ってしまい、金策に苦労したのです。
それをどうにか切り抜けた後、私が得た教訓が、焦らず、走らず、成長が盤石な企業を作る、という〝勢いの理論〟です。
この戒めを知ったことは、その後の私の人生に非常に役立ちました。
船井総研に入ってからも、事情は異なっていても、似た経験をしている企業をたくさん見てきました。急成長は危ないということを伝えたいと思い、〝勢いの理論〟については何度も話をしたことがあります。
大事なのは勢いをなくさず、プラス思考で一歩一歩進み続けることです。
常に奮い立つというのはなかなか難しいことですが、経営者としてモチベーションを維持する方法はいくつもあります。
「繁盛店に行って、レジ付近で来店客の買い物やスタッフの接客を見る」「世の中のせいにする同業者とは付き合わない」「楽しそうに生きる人に嫉妬しない」、「商売から引退する齢になっても、時には店に出て上客のことを思い出す」、「自分や自店舗の良いところを見つめてみる」などなどです。
自分を戒め、一歩一歩と思ってはいても、どうしても走り出さずにはいられない時が、人生には何回かあるものです。もちろんその時には走ればいいのです。ただその後、息切れしたり、敵ができたり、足元が揺らぐような余波が出る場合があることを念頭に入れ、脇を締めて冷静さを失わない、これが大事なのです。
勝負時の今、経営者はこのことをぜひとも意識してください。
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