日商会頭の9年間は、私のビジネスキャリア60年の総仕上げであり、人生の中で最も充実した9年間でした。
全国515の商工会議所の全ての方々、とりわけ共に悩み・喜んだ11人の副会頭の皆さま、活発な活動をしている全ての委員会の皆さま、青年部・女性会の皆さま、さらに商工会議所活動を全力でサポートしてくれた日商および515商工会議所の役職員、3400~3500人の経営指導員の皆さま全員に心より御礼申し上げます。
われわれを取り巻く環境は極めて厳しい、しかし、私は希望を持ちながら、非常に爽やかな気分で日商会頭を退任できます。それは、三つのことを確信しているからです。
その第一は、9月16日に天皇陛下の御臨席を仰ぎ、100周年の記念式典を開催いたしましたけれども、その際、未来に向けた商工会議所の活動方針である「宣言~地域とともに、未来を創る~」を公表いたしました。
「地域経済、日本経済を支える企業、とりわけ中小企業は足元の大変革期を乗り越え、未来においても光り輝き続けなければならない。そのためには、自ら環境変化に対応し、覚悟を持って自己変革への挑戦を続ける必要がある」、このように宣言で申し上げました。
過去20年間の停滞した日本にあっては、変革しないことのコストはそれほど大きくなかったけれども、現在のような大きな環境変化の下では、自己変革しないコストはとてつもなく大きいわけです。中小企業の最も優れた能力は、環境変化に合わせて自己変革する能力です。多くの企業がコロナ禍の下にあっても、既に自己変革の努力をスタートさせています。このような中小企業こそ、日本を再び強く豊かな国に変える重要な担い手になること、これを私は確信しています。
第二は、地方創生の可能性についてであります。
会頭在任中、各地の商工会議所の皆さまと対話する多くの機会に恵まれました。九つのブロックの年次総会、青年部・女性会の全国大会、全国観光振興大会、100周年を超える各地の周年事業、絆まつり等々であります。コロナ禍のため、この2年半は対面での大会が中止となったことはやむを得ないこととはいえ、大変残念なことでした。
本年5月より行動制限が撤廃され、各地の行事がリアルで一斉に再開されました。私も、函館、八戸、前橋、京都、富山、岡山で開催されたブロック総会などに出席し、さらに愛媛の全国観光振興大会、秋田の絆まつり、郡山の全商女性連全国大会、京都の140周年式典、鹿児島の140周年式典などへ参加するなど、多忙でありますけれども、極めて充実した日々を送ることができました。
六つのブロック総会などでは、各県代表による40程度の地方創生事例に接することできました。私も最後の機会と考えて、一つ一つの発表に対して自分なりの意見を申し上げましたけれども、うれしい驚きは発表された事例のレベルの高さであります。明確にコロナ前より向上しています。広域連携や、地域間での産・官・学の連携の推進を含め、他者に何かを求めるのではなく、自らの努力で地方創生を成し遂げなければならないという決意が強く印象に残りました。
コロナ禍はむしろ商工会議所の地方創生活動にポジティブな影響を与えています。地域とともに、未来を創ることの十分な可能性があることを確信しています。
第三に、小林健さんを私の後任として得られたことです。
大きな変革期に自己変革をするためには、世界の中での日本、世界の中での中小企業を常に意識しなければならなりません。私は、大企業、中小企業、スタートアップ、さらに製造業、サービス業、投資家など、さまざまな規模・業種間の協調・競争による、緊張感のある交流から新しい日本が生まれると考えております。小林会頭はこのような時代の求めるキャリアと能力の持ち主です。新しい視点で商工会議所を導いていただけるものと確信しています。
最後になりますけれども、今こそ、日本の中小企業が「変化への挑戦」を通じて底力を発揮し、そして、中小企業と大企業、スタートアップが共に集う商工会議所が、官民連携しながら日本全体の変革をリードすることを心から祈念し、私からのあいさつとさせていただきます。
9年間、本当にありがとうございました。
最新号を紙面で読める!