先人が残した小倉織の技術を継承しながら革新的なものに挑戦
小倉織物製造株式会社 代表取締役 築城 弥央(ついき・みお)
途絶えた伝統技術を復活ストーリー性のあるブランドへ
弊社は、「小倉織(こくらおり)」の企画~染め~紡績~織りまで一貫して監修を行うことで、高品質の織物を提供しています。
色鮮やかな、たて縞が美しい「小倉織」は江戸時代初期に豊前小倉藩で生まれ、徳川家康が鷹狩りの羽織に愛用したといわれる伝統織物なのですが、昭和初期に一度途絶えてしまいます。染織家の伯母が、市内の骨董品店で偶然小倉織の端布を見つけたのをきっかけに組成や工程を研究。1984年に復元しました。その後、母が2007年にブランド「小倉 縞縞(こくらしましま)」を立ち上げ、機械織の小倉織を復活。私はそのとき台湾の日系企業で働いていたのですが、母からの依頼を受け、小倉織ブランドの設立を手伝うことになりました。
そこではネクタイやエプロン、バッグ、風呂敷などを企画制作し、欧米の見本市にも出品。一般的な織物の2倍以上のたて糸を用いて織る布は高い評価を受け、海外の有名ブランドからも注文が入るようになりました。生産は別業者に外注していたのですが、注文に追い付かなくなりました。加えて高品質・小ロット・オリジナルデザインなど多種多様なオーダーに応えることが今の時代には必要だと実感。このままでは再び伝統技術が途絶えてしまうという危機感もあり、18年に織物工場の弊社を立ち上げました。
高度な小倉織の技術を生かして工場オリジナル生地「KOKURA DENIM」を開発。世界的なファッションデザイナーとコラボレーションして、和装と洋装の要素を取り入れた「ハカマデニム」は米国での先行デビューを経て、国内でも販売したところ、2回も増産するほどの売れ行きでした。
生産体制の軸にサステナブルを取り入れる
現在、弊社の主要ターゲットは、アパレル業界ですが、今後は小倉織の丈夫さとデザイン性を生かして、建築・インテリア業界にも進出しようと思っています。そこでは価格競争やブランド力だけでなく、社会性やストーリーのあるものに関心が移行しています。そして今は、あらゆる業界を超えて「サステナブル」の視点が必須です。
弊社は生地を製造する際に出る残糸や生地耳の活用や、工場見学用の動画を制作するなど、SDGsの視点を取り入れた新しい学習の場を地元教育機関と連携して、株式会社小倉縞縞と共に、提供しています。ここでは、SDGs達成へ向けた取り組みを軸に、小倉織の持続発展や伝統の継承、郷土愛の醸成なども学びの要素として重視しています。
今後は、小倉織の特性と小規模工場の動きやすさを生かし、他社では難しい顧客に合わせた生地開発を行い、顧客満足度を高め、生涯のファンを獲得していくことを目指します。また、地球環境に配慮したサステナブルな素材や仕組みを取り入れて、ものづくりを行っていきます。
会社データ
社名 : 小倉織物製造株式会社
所在地 : 福岡県北九州市小倉北区紺屋町13-1 毎日西部会館2階
電話 : 093-953-8388
創業 : 2018年
事業概要 : 小倉織を中心とする各種繊維生地の製造・販売、各種織物の企画、特殊サンプル制作・製造、デザイン企画、プロデュース
HP : https://www.kokuraorimono.com/
【北九州商工会議所】
※月刊石垣2023年2月号に掲載された記事です。
最新号を紙面で読める!