日本商工会議所青年部は、今年度実施した第20回ビジネスプランコンテストで応募のあった93プランからグランプリ(日商会頭賞)に櫻井鉄矢氏(仙台YEG)の「美大生アートギャラリー事業」を選定した。プラン概要は次の通り。
【受賞プラン】美大生アートギャラリー事業~芸術家が芸術家として暮らせる社会を目指す~
【受賞者】仙台YEG・櫻井鉄矢氏
美術家は作品を送付するだけ
・パリ市内には、中心部に美術家のアトリエが多数存在する。それに対し、日本の美術作品の現状は、画商と美術家の力関係(7:3~9:1)の差や美術家自身の販売ノウハウのなさ、また美術品を一定の温度や湿度で管理する「倉庫」を持っていないことから、美術家が自身の力だけで暮らせていない現況がある。
・櫻井氏は2012年から質屋を仙台市内に3店舗経営しており、倉庫を所有し、芸術品の販売ノウハウを持っている。同氏が考案したビジネスモデルは、①美術家は作品を送付するのみ、②作品の販売、採寸、計量、撮影、データ入力、管理、保管は全て自社で対応、③販売額の6割を美術家へ支払い、1割を美術家の出身大学へ寄付。また、東北唯一の総合芸術大学である東北芸術大学に直談判し、協力を得ることに成功した。
学生の卒業展で大きな反響
・販売戦略として、①作品の「ストーリーや背景」を記載、②学生の「出身地」を記載し、SNSのハッシュタグを活用、③一般的な美術品と違い5万円以下のリーズナブルな販売価格を設定した。
・卒業作品展でテストマーケティングを実施したところ、1週間で70作品、150万円の売り上げとなった。「応接室に地元出身の学生の作品を飾りたい」「才能ある学生の作品は今後値上がりすることが見込まれるので購入したい」という声や、中国では表現に制限がかかっており希少価値が高いことから「中国人留学生の作品」の特需の発見につながった。
・本事業を通じた将来的な目標として、アートを身近にして生活に潤いを与えるとともに、日本中の埋もれた才能を引き出すプラットフォームを形成し、芸術系大学の新たな収入源を作ることで、芸術家が芸術で暮らせる社会を構築し、世界に 通じる美術家を輩出することを掲げる。
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