政府は2月15日、第14回新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄首相)を開催し、リスキリング、労働移動、構造的な賃上げの方向性などについて議論を行った。会議に意見書を提出した日本商工会議所の小林健会頭は、構造的な賃上げについて「中小企業も含む多くの企業における付加価値の拡大が不可欠」と指摘。会合に出席した岸田首相は、「賃上げは、新しい資本主義の最重要課題」と強調するとともに、「6月までに、この会議の場で労働市場改革の指針を取りまとめる」との考えを表明した。
日商の小林会頭は、提出した意見書で、中小企業における活発なイノベーション活動や社員教育への意欲が高い一方で、「深刻な人手不足の状況にあり、人材育成のための時間の確保、指導する人材の不足が課題」と指摘。構造的な賃上げについては、「中小企業も含む多くの企業における付加価値の拡大が不可欠」との見方を示し、「企業が新たな事業展開や技術開発に挑み、従業員がそのために必要な知識・技術を学び、仕事に生かすことで、企業収益の拡大と賃金上昇の好循環に結び付けていくことこそが重要」と強調した。
政府に対しては、幅広いリスキリングの取り組みを促すため、「わが国が目指す産業ビジョンを明確にし、今後の成長分野に求められる能力・スキル習得のための公的な職業訓練の抜本的な拡充を求める」と要望。多くの求職者などが利用して高い成果を上げている全国の「職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)」や都道府県の「職業能力開発センター」について「各地域のニーズも踏まえ、講座内容と予算・体制の抜本的な拡充を図られたい」と求めた。
岸田首相は、「賃上げは、新しい資本主義の最重要課題。足元のエネルギー高騰対策や低所得者世帯への支援などと併せて、物価上昇を超える賃上げを目指す」と述べるとともに、リスキリングと労働移動については、「労働者が自分の意思 、自ら選択できる制度に移行していくことが重要」との考えを表明。また、官民の情報共有化、ハローワークのコンサルティング機能強化、自己都合で離職した場合の失業給付の在り方の見直し、同一労働同一賃金の徹底など「今年6月までに、 労働市場改革の指針を取りまとめる」との考えを表明した。
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