サイバー攻撃で情報漏えいが多発
近年、ECサイトへのサイバー攻撃により個人情報やクレジットカード情報が漏えいする事件が多数発生している。特に中小企業が構築・運用するサイトのセキュリティ対策に課題が多く見られることから、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では2022年度に中小企業のECサイトにおける実態把握を目的とした調査や脆弱(ぜいじゃく)性診断を行っ た。
最近サイバー被害を受けたECサイト運営事業者20社を対象としたヒアリング調査では、1社当たりの顧客情報の平均漏えい件数は約3800件、そのうち事故対応費用を支出した19社では、事故対応費用の平均額が約2400万円に上ったことが分かった。また、20社のうち75%がECサイト構築プログラムやCMS(コンテンツマネジメントシステム)などの脆弱性を放置または最新版へのアップデートを怠っていたことや、90%が保守など運用時のセキュリティ対策を実施していなかったことが分かった。
こうした状況を踏まえ、経済産業省とIPAは、ECサイトの構築・運用に必要なセキュリティ対策とその実践方法を取りまとめた「ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン」を作成し、3月16日に公開した。
実行すべき対策を明示
本ガイドラインの最大の特長は、経営者がECサイトにおけるセキュリティ対策の基本を認識できるよう、第1部としてまず経営者向けのメッセージを図表やイラストを用いて伝えていることにある。ECサイトのサイバー被害が経営に及ぼす影響やセキュリティ対策の重要性をデータで示した上で、セキュリティ確保のために経営者が実行すべきセキュリティ対策の基本を7項目で明示した。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」に記載されている七つの重要項目に基づき、必要な予算と人材の確保や、脆弱性対策のための日常的なセキュリティ運用、緊急時の体制整備などを示し、実務担当者に適切な指示を出せるようにしている。
また、第2部として実務者向けに、ECサイトの構築時、運用時それぞれにおけるセキュリティ対策要件を示し、さらに付録としてチェックリストの形で利用可能にしたことも特長である。
構築時のセキュリティ対策要件は14、運用時のセキュリティ対策要件は七つの要件で構成され、要件ごとに「必須」「必要」「推奨」と3段階の区分が記載されている。
例えば、構築時には「ECサイトの公開前に脆弱性診断を行い、見つかった脆弱性を対策する」「管理者画面や管理用ソフトウエアへ接続する端末のセキュリティ対策を実施する」、運用時には「サーバおよび管理端末等で利用しているソフトウエアをセキュリティパッチ(脆弱性を解消するためのプログラム)等により最新の状態にする」「ECサイトへの脆弱性診断を定期的およびカスタマイズを行った際に行い、見つかった脆弱性を対策する」などを必須項目として示し、それぞれ詳しく解説している。
本ガイドラインの詳細については、IPAのウェブサイトで確認してほしい。
(独立行政法人情報処理推進機構・江島将和)
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