政府は13日、次元の異なる少子化対策を検討していた「こども未来戦略会議」が取りまとめた「こども未来戦略方針」を閣議決定した。方針では、こども・子育て政策の強化に向けて「若い世代の所得を増やす」「社会全体の構造・意識を変える」「全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する」の3点を基本理念に掲げ、経済成長の実現と少子化対策の強化を車の両輪に大きなパッケージを示し、こども・子育て世代の所得を伸ばすための具体策などを提示。閣議後の記者会見で岸田首相は「持続的で構造的な賃上げと人への投資、民間投資増加の流れを加速させるとともに、児童手当の大幅拡充、高等教育費の負担軽減、出産費用の保険適用、106万円・130万円の壁の見直しなど、長年指摘されながらこれまで実現できなかった経済的な支援策の拡充を思い切って実現する」との考えを表明した。
財源についても、経済成長を阻害し、若者・子育て世代の所得を減らすことがないよう、徹底した歳出改革などで確保することを原則とすることを明記。既存予算の最大限の活用なども実施し、国民の実質的な追加負担を求めることなく新たな支援金の枠組みを構築し、少子化対策を進めていくことなどが示された。
岸田首相は「若年人口が急減する2030年代に入るまでが、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだ」と述べ、今後3年間集中的に取り組む「加速化プラン」の規模については、OECDトップのスウェーデン並みの水準となる3兆円半ばとする考えを表明。政策実行のスピード感を重視し、出産育児一時金の引き上げや0歳から2歳の伴走型支援、児童手当拡充や「こども誰でも通園制度」など必要な政策を速やかに実施するほか、高等教育の支援拡充などは前倒しで実施する。歳出改革などの完了に複数年を要することで生じる財源不足については、「こども特例公債」を活用することも示した。
児童手当については所得制限を撤廃するとともに、高校生の年代まで支給期間を3年間延長し、そして第3子以降は3万円に倍増。大学に進んだ場合の高等教育について、授業料減免の対象を年収600万円までの多子世帯などに拡大するとともに、さらなる支援拡充を加速化プランに前倒しして実施する。子育て期の家庭の経済的負担に配慮した貸与型奨学金の返済負担の緩和、授業料後払い制度の抜本拡充などにも取り組む。
共働き世帯を支援するため、「106万円の壁」を超しても手取り収入が逆転しないよう、必要な費用を補助するなどの支援強化パッケージを23年中に決定し、実行する。また、週20時間未満のパートタイマーに雇用保険の適用を拡大。育児休業給付が受け取れるようにするとともに、育児中の自営業やフリーランスに対する国民年金保険料免除措置を創設する。さらに、子育て世帯が優先的に入居できる住宅を今後10年間で計30万戸用意。住宅ローン「フラット35」の金利を子供の数に応じて優遇する。
育児休暇取得率目標を大幅に引き上げるほか、中小企業の負担に配慮し、育休を取った職員に代わる応援手当など助成措置を大幅に拡充。育休取得に熱心な企業ほど多く支援が 行くように傾斜をつけた仕組みを導入する。
時短勤務やテレワークなど多様な働き方を選べる環境を整備。また、産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の給付率を、手取り10割相当に引き上げるなど育児休業給付に関連する予算額は2倍に増加させる。
最新号を紙面で読める!