経済産業省は7月4日、IAEA(国際原子力機関)が取りまとめ、公表した東京電力福島第一原子力発電所における処理水の安全性レビューを総括する包括報告書を公開した。報告書では、包括的な評価に基づき、IAEAは、「ALPS処理水の海洋放出へのアプローチ、並びに東電、原子力規制委員会および日本政府による関係する活動は関連する国際的な安全基準に合致」と指摘。放射線の影響については「東電が現在計画しているALPS処理水の海洋放出が人および環境に与える放射線の影響は 無視できるもの」と結論付けた。
また、IAEAは、放出前、放出中および放出後もALPS処理水の放出に関し日本に関与することについても報告書でコミット。 「追加的レビューおよびモニタリングが継続予定であることは、国際社会に追加的な透明性および安心を提供するものである」と強調している。
経産省では、政府の対応について「同報告書の内容を詳細に確認した上で、透明性をもって国内外に情報発信する」との考えを表明。今後の対応については「IAEAに対する必要な情報共有を継続するとともに、ALPS処理水の海洋放出について、国際社会の一層の理解を醸成していくことに努める」と取り組みを継続する考えを示した。
IAEAが5月31日に公表した世界各国の調査機関のALPS処理水の分析結果では、「東京電力は正確で精密なALPS処理水の分析能力を有していることを留意する」とするとともに「東京電力が、ALPS処理水の放出中における福島第一原発で継続中の技術ニーズを支援するための持続可能で堅固な分析体制を構築していることを実証した」と結論付けていた。データ分析は、IAEA立ち会いの下で採取されたALPS処理水のサンプルについて、IAEAの研究所(海洋環境研究所、陸域環境放射化学研究所、アイソトープ・ハイドロジー研究所)とIAEAにより選定された第三者分析機関(シュピーツ研究所・スイス、放射線 防護・原子力安全研究所・フランス、ロスアラモス国立研究所・米国、韓国原子力安全技術院・韓国)がデータ分析を実施。各調査機関の分析結果の比較およびデータを示している。
IAEA包括報告書のポイント
1.ALPS処理水の海洋放出へのアプローチ、並びに東電、原子力規制委員会および日本政府による関係する活動は関連する国際的な安全基準に合致している。
2.東電が現在計画しているALPS処理水の海洋放出が人および環境に与える放射線の影響は無視できるもの。
3.IAEAは、放出前のレビューだけではなく、放出中・放出後もALPS処理水の安全性確保にコミット。
4.追加的レビューおよびモニタリングを継続し、国際社会に透明性と安心を提供する。
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