日本商工会議所の小林健会頭は7月19日、夏季政策懇談会後に行われた定例の記者会見で、取引価格の適正化を商習慣とし て定着させることの重要性、パートナーシップ構築宣言のさらなる拡大などについて、「各地の現状認識は一致していた」と指摘した。事業承継税制の事前申請の延長については、「特例措置の恒久化も視野に入れる」と強調。9月に取りまとめる税制改正に関する要望に盛り込む考えを示した。
小林会頭は、夏季政策懇談会におけるディスカッションついて、「観念的な議論が少なく、実質的な要望・意見が非常に多かった」と評価。「日本経済全体が大きく変化しようとする中で、われわれは何をすべきか、というような問題提起が多 かった」と感想を述べた。中でも、取引価格の適正化の重要性について、「各地の現状認識は一致していた」と 強調した。
事業承継については、「経営者は黒字廃業にしないよう、後継者マッチング、M&Aなどについて極めて真剣に考えている」と指摘。事業承継税制の事前申請の延長については、「特例措置の恒久化も視野に入れる」と強調し、今年度の税制要望の第一の柱とする考えを示した。
「年収の壁」については、「社会保障政策は、働いた分は応分の社会保険料を支払うことで、将来は労働者自身にも裨益(ひえき)するという回転であるべき」と指摘。「将来的には『年収の壁』は取り払い、労働者は全員支払うということが 本筋だと思う。これと3号被保険者の問題はまた別の問題だ」との考えを述べた。
価格転嫁については、「賃上げをしている企業も、防衛的賃上げが多い状況だ」と指摘。「原材料費は半分近くまで価格転嫁できている。一方で、労務費とエネルギー価格は4割弱しか転嫁できておらず、これを原材料費並みに持ち上げていき、その中から賃上げの原資を捻出していく、ということに重点を置くべきだ」と考えを述べた。
最低賃金については、「政府が数字を先に出し、それでフォローするという形になっているのは、本来の最低賃金の決め方としては甚だよろしくない。問題は企業の『賃金支払い能力』だ」と指摘。目標設定の在り方については「実勢に則したベースでの『積み上げ』があるべき姿だ。最低賃金は必ず守らねばならないものであり、そのために苦労している企業も多い。そうした企業の支払い能力も含めて議論し、政労使が納得する数字を決めるということだ」と述べた。
パートナーシップ構築宣言については、「経団連の役員企業は全て宣言をしているが、それ以外の会員企業は約4割しか宣言していない」と指摘。「大企業と中小企業が共に成長できる関係を構築し、話し合う事が重要だ」と述べた。
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