日本商工会議所は3日、「2018年度全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」の受賞事業11件を発表した。大賞は、京都商工会議所(京都府)と大津商工会議所(滋賀県)による「琵琶湖疏水(そすい)船」を活用した観光振興事業が受賞した。かつて貨物・旅客に大いに利用されていた琵琶湖疏水船を観光資源として再生させた点が評価された。
先進的事業11件選定
琵琶湖疏水は琵琶湖の水を京都に引くために明治時代に造成された水路で、明治維新による人口激減で衰退の危機にあった京都復興の一大事業だった。貨物・旅客に大いに利用されたが、交通機関の発達により1951年に途絶え、産業遺産としてその存在をとどめてきた。
京都および大津商工会議所は明治150年の節目を迎える2018年に琵琶湖疏水を観光資源として復活させるために、事業の中心的役割を果たしてきた。京都商工会議所では観光資源として琵琶湖疏水について検討を重ね、遊覧船事業の可能性調査などを行い行政に提案。こうした取り組みが結実し、14年12月に疏水を管理する京都市上下水道局を事務局とする「琵琶湖疏水船下り実行委員会」が発足。17年9月に京都および大津商工会議所、滋賀県、両市の行政・観光協会、交通事業者で構成する琵琶湖疏水沿線魅力創造協議会が発足し、事業の実現に至った。
15年からの3年間は、安全面・ガイド・接遇・ダイヤ・料金設定などのビジネスモデル化、乗下船などの環境整備、テスト運航を重ね、18年春から本格運航開始した。3~5 月期の販売率は98・1%と好調で乗客アンケートも高評価であった。今後はインバウンド誘客も視野に入れ、18年度には外国語パンフレットを制作するほか、多言語ガイドの育成も計画している。
その他、受賞商工会議所として、優秀賞に塩釜(宮城県)、佐世保(長崎県)、きらり特別賞に能代(秋田県)、前橋(群馬県)、奨励賞に五所川原(青森県)、秋田(秋田県)、大館(同)、射水(富山県)、武生(福井県)、宇治(京都府)の各商工会議所が選ばれた。
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