政府は9月5日、「ALPS処理水関連の輸入規制強化を踏まえた水産業の特定国・地域依存を分散するための緊急支援事業」に関する予備費207億円を閣議決定した。同月4日に発表した「水産業を守る」政策パッケージ(総額1007億円)の一部。ALPS処理水の海洋放出以降の中国、香港、マカオの輸入規制強化などを踏まえ、科学的根拠に基づかない措置の即時撤廃を求めるとともに、新たな輸出先の開拓や輸出先のニーズに応じた加工体制の強化など全国の水産業支援に万全を期す。
「水産業を守る」政策パッケージは「国内消費拡大・生産持続対策」「風評影響に対する内外での対応」「輸出先の転換対策」「国内加工体制の強化対策」「迅速かつ丁寧な賠償」の5本柱で水産業を支援するもの。緊急支援事業は、水産物の新たな需給構造構築に向け、輸出先の開拓や新たな輸出先のニーズに応じた加工体制の強化を支援する。
具体的には、輸出先の転換対策として、漁業者団体などに対し輸出減が顕著な品目(ホタテなど)の一時買い取り・保管や海外を含む新規需要開拓を推進。また、「水産業者などと海外バイヤーとのビジネスマッチングや展示会・試食会などへの出展支援、専門家による伴走支援などを通じた販路開拓サポート」「越境Eコマースを通じた顧客開拓支援」「現地スーパーマーケットやレストランなどと連携した試食販売フェア」「海外一般消費者向けに食材の魅力発信」などを実施する。
輸出先国のニーズに応じて国内加工ができる体制整備に向けては、「既存の加工場のフル活用に向けた人材活用支援」「国内の加工能力強化に向けた加工・流通業者が行う機器の導入支援」などを実施する。
また、農林水産省は同日、日本産食品のEU向け輸出拡大のため、ベルギー・ブリュッセルに輸出支援プラットフォームを設置。欧州委員会関係者、ブリュッセル駐在各国外交官などに向け、福島県産水産物や果実をはじめとする日本産食品を紹介するレセプションを開催している。
さらに9月7日には、日本産水産物の海外販路拡大に向け、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)が「水産品等食品輸出支援にかかる緊急対策本部」を設置。水産物を中心に、海外における代替市場の販路開拓、日本産食品のさらなるイメージアップへの取り組みを重点的に展開していく。
9月8日には、フランス・トゥールーズでラグビーワールドカップの観戦者らに向けたホタテ、ブリなどの日本産食品のプロモーションイベントを実施。ドイツ・ケルンで10月に開催予定の欧州最大級の食品見本市「アヌーガ」の会場内では、商談機会を提供するとともに、日本産食品をアピールする。
輸出有望市場の一つである米国では、水産関係卸などの関係者で構成する「米国輸出支援プラットフォーム水産分科会」を設置。来年3月にボストンで開催される「Seafood Expo North America2023」などの有力展示会に出展し、販路を開拓する。
詳細は、下記を参照。
緊急支援事業https://www.meti.go.jp/press/2023/09/20230905001/20230905001.html
ブリュッセルPF https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/chiiki/230904.html
ジェトロ緊急対策本部https://www.jetro.go.jp/news/releases/2023/69cd0373e0707b0f.html
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