長所伸展法とは、船井総研の創業者である舩井幸雄氏が提唱したもので、社員の成長を促す教育法として、同社で長い間取り入れられています。簡単に紹介すると、その人の得意分野をさらに伸ばしていき、不得意なことなどには極力触れないようにする、といった内容です。
会社の資産である社員を、早く成長させる土壌づくりを考えたとき、教育時だけでなく社員同士も、長所伸展法で付き合うことが効果的だと思います。もちろん、自社基準に照らし合わせて見逃せないほどの習慣や思考は、是正するよう教育しないといけません。しかし、ビジネス面で収益の糧になるのは社員一人一人の持つさまざまな長所。つまり長所=資産であるわけです。
実際に、社員を連れていろいろな店舗を視察し、その後、社員たちにその感想を尋ねたところ、新入社員たちは、視察店舗で見つけ出した大小の欠点を並べ上げ、長所はほとんど挙げませんでした。一方で、コンサルタント歴が10年を超えた中堅やベテラン社員は、欠点が目に付いても列挙はしません。彼らは、欠点の指摘や是正が営業成績には直接結び付かないことをすでに経験しています。欠点には目をつぶり長所を見いだすことの重要性が、身に付いているのです。「なぜこの立地で経営が成り立っているのか」「店は古くてもお客さんが絶えない秘密はどこにあるのか」など、店舗を支えている長所に新人たちは気付けませんでした。見る側が未熟だと長所も見えにくいものです。
さて、舩井幸雄氏の場合は、どうだったのでしょうか。氏いわく「私には長所しか見えない」。見ようとしないのではなく、「見えない」と断言したのです。確かに数百人規模の企業のトップでありながら、他人の欠点や未熟さについて口にしたことを私も聞いた記憶がありません。
かつて船井総研の役員に昇進して、氏と身近に接するようになったとき、自分もそのようになりたいと考え、相手の長所だけを意識的に見るようにしました。私が数学の知識を応用した「数理マーケティング」により、指導先の数字を上げることにまい進していた頃です。売り上げが伸びるに従って、役員やオーナーもスケジュールを調整して直接話を聞いてくれるようになり、個人的な付き合いも始まりました。すると長所伸展法で接する私に、相手はことさらリラックスして会話も弾み、私はその組織の内情をさらに深く把握できたのです。
数字のみならず組織のクオリティーや企業に関わる人の幸福感を高める「人間力マーケティング」など、私がマーケティングの幅を広げていった背景には、長所伸展法があったのです。皆さんも、生き方として取り入れてみてはいかがでしょう。
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社名 : 株式会社 風土
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担当 : 髙橋
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