Q 在宅でのテレワークを導入したところ、オフィスでは早期に気付けた社員のメンタルヘルス不調が分かりにくくなりました。不調者がいれば早期に適切な対応をしたいのですが、テレワーク下で社員のメンタル不調をどう発見していけば良いでしょうか。
A メンタル不調者を早期発見するには、日頃の取り組みが大切です。不調のサインは、勤怠状況や仕事の遅延などにも表れやすく、予兆を見逃さないコミュニケーションが重要になります。ストレスチェックやアンケート調査を活用する方法もあります。不調者がいた場合は、問い詰めたり精神的に追い込んだりすることのないよう留意し、産業保健スタッフなど専門家のアドバイスを受けながら対応してください。
テレワークで顔を合わせる機会が少なくなる中、メンタルヘルスの不調に悩む「いつもと違う」社員に気付くためには、日頃から予兆の発見を意識した取り組みが重要です。
テレワークでのストレス要因
厚生労働省の「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き」には、テレワーク下における職場のストレス要因が示されています。会話や相談がしづらくなり、悩みを抱え込んでしまう、オンラインに慣れず孤独感や不安が募って集中力を喪失、パフォーマンスも低下するなど、これらが蓄積するとメンタル不調に至ります。
メンタルヘルス不調のサイン
テレワークや出社の際、「調子が悪いと訴えることが増えた」「体調不良での早退が目立つようになった」「表情や動作に元気がない、意欲を感じなくなった」「休みがちになった」「休憩や中抜けが目立つようになった」などの勤務上の変化はないでしょうか。業務上では、「普段ならしないようなミスをする、ミスが増えた」「業務の進捗が滞っている、メールの返信や連絡が遅れる」「職場での会話、オンラインミーティングでの発言が少なくなった」「ミーティングを欠席しがち、顔出しや発言がない」といったことが重なれば、メンタル不調のサインと捉えてよいでしょう。
早期発見のポイント
予兆を見逃さないことが、早期発見につながります。サインの多くは、日頃から観察できていないとその変容に気付かないものです。勤怠状況や本人の様子、仕事の遅延を気に掛け、見過ごさないように少しでも多くの機会をつくりましょう。
⑴出社する機会をつくる 本人の様子を直接把握できる機会はとても大事です。相手の顔色や表情、言動などを観察し、気になることがないかしっかりと確認できる一対一の面談は、欠かせません。些細なことにも耳を傾けて相談に乗り、相手との距離を縮めるよう努めます。また、ミーティングなど同僚やチームのメンバーと顔を合わせる機会が持てると、孤独感も薄れてくるはずです。
⑵オンラインでの工夫 画面を通しての朝礼やオンライン会議の後にお互いの様子を伝えるなど、ちょっとした時間を使うのが効果的です。打ち合わせの機会をわざわざ設定するよりも、ついでと称して気軽に声を掛け合う方が良いようです。カメラの顔出しを嫌がる人の場合は音声だけでも構いません(メンタル不調の中で押し付ける行為は逆効果にもなりますので、留意が必要です)。
⑶ストレスチェックなどの活用 ストレスチェックは、仕事や職場に関する質問に一問一答形式で回答し、ストレスの度合いを測るものです。産業医選任義務のある50人以上の事業場には実施が義務付けられていますが、小規模事業者の場合は、厚労省が無料で配布している「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」をお勧めします。簡単に利用でき、兆候を判別するのに役立ちます。
こうした取り組みを通じてメンタル不調の社員を発見した場合は、産業保健スタッフなどの専門家に相談し、支援を受けながら対応することが大切です。
(中小企業診断士・竹内 敏則)
最新号を紙面で読める!