札幌初の24時間営業サンドイッチ専門店を運営するサンドリア札幌は、1978年に創業した。手頃な価格で、旬の食材や多様な具材のサンドイッチ、惣菜サンドを提供。常に損益分岐点を意識して、メディアへの露出で話題を振りまく戦略に成功し、2021年に2号店をオープン。札幌駅にサンドイッチの自動販売機を設置すると行列ができ、人気が途絶えない。
家でもつくれそうでまねできない味を狙う
サンドリア札幌が創業から45年間つくり続けてきたのは、心と体に優しいサンドイッチだ。高級小麦粉を使った同店専用の食パンに、新鮮でヘルシーな具材をたっぷり挟み、ボリューム満点なのが大きな特長。定番品のほか季節のフルーツを使った限定品など、常時40~50種類をラインアップし、200~350円という手頃な価格で販売している。 「どこか懐かしくて飽きのこない味。家でもつくれそうなのに決してまねできない、そんな味を狙っています」と社長の津田哲平さんは自信をのぞかせる。
同店は、もともと日糧製パンがフランチャイズ展開していた「サンドーレ」の店舗だった。その後、店名を「サンドリア」に変え、創業者の先代が独立。サンドイッチ専門店として営業を始めた。以降、豊富な種類を取りそろえた、札幌初の24時間営業サンドイッチ店として市民に親しまれてきた。 「先代は縁戚で、祖父の葬儀で久々に会ったとき、後継者がいないと聞きました。当時、僕は料理人として働いていたんですが、店舗経営に興味があり、自分の店を持つ夢もありました。それで2015年に当社に入社し、3年後に経営を引き継ぎました」
全体で損益分岐点を少し上回ることを常に心掛ける
津田さんが経営者となって最初に取り組んだのは、新メニューの開発だった。それまで3~4年に1回ペースだった新商品開発を1年に1~2回ペースに変更し、最終的に40~50種類まで増やそうと考えた。その際、「どういう目的を定めてつくっているかが分からない料理はおいしくない」という自身の経験則から、「フレッシュでボリューミーなものを安く提供する」という同社商品のコンセプトを従業員全員に周知させた。そしてそれを可能にするために、新鮮な食材を安く仕入れて、一度に大量につくることを基本にした。 「米は1合炊くより1升炊く方がおいしいように、サンドイッチの具材もまとめてたくさんつくるとおいしくなります。それを誰が担当しても同じ味に仕上がるよう、全商品のレシピをつくりました」
そうした方針の下、誕生した季節限定品の一例がメロンサンドだ。付き合いのある八百屋がメロンを安く卸してくれたので大量に仕入れ、1個350円で販売した。高級食材を使ったフルーツサンドなら、通常700~1000円はするが、350円で利益は出るのだろうか。 「もちろん、メロンサンド単体で見れば原価率は割れます。ただ、甘いサンドイッチを選んだら、同時にしょっぱい味も買いたくなるもの。当店の商品は価格が手頃なこともあって、お客さんは大抵4~5個まとめて買って行ってくれるので、全体で見ればプラスになります」 津田さんは同店を「薄利多売の店」と位置付け、経営においては常に損益分岐点を少し上回ることを心掛けてきた。製造量が増えても製造コストはあまり変わらないため、数をつくるほど1個につき10円、20円という単位で利益が生まれる。そうして売り上げを伸ばし、社長就任時と比べて年商を3~4倍にアップさせた。
メディアへの露出を高めて知名度を上げ話題を振りまく
また、店の知名度を上げるために、メディアへの露出にも積極的に取り組んでいる。 「最初にテレビに取り上げられたときは、あまりの反響に商品をつくる材料が底をついて、泣く泣くシャッターを閉めたこともありました。でも、だんだん要領が分かってきて、今では自分からテレビ局に『取材に来ませんか』と電話をすることもあります」
そういう意味で津田さんは常に話題になることを意識しているという。例えば、21年にオープンした2号店もそうだ。新型コロナの感染拡大で本店の営業日数が減り、売り上げは急減したものの、浮いた時間を利用して念願だった2号店の開店に着手した。 「SNSを意識して、店舗建設中は『サンドリア近日オープン』『サンドリア10月オープン』『サンドリア10月1日オープン』とわざと看板の文言を少しずつ変えながら、期待感をあおっていきました。開店初日にはテレビ局に取材をお願いして、内心、お客さんがどれくらい来てくれるか心配だったんですが、ふたを開ければ開店前から300人ほど集まってくれて大盛況でした」
今年の3月には、JR札幌駅西口改札近くにサンドイッチの自動販売機を設置した。同店のサンドイッチがいつでも手軽に買えると、連日のように行列ができている。初日の売り上げは30万円を超え、8月までの6カ月間で累計20万個を販売、「自称日本一売れる自販機」(津田さん)というほど好調が続いている。 「自販機は、話題性と『サンドリアに行きたい』という気持ちを盛り上げることが主な目的なので、今後も札幌駅の名物というか、珍百景として存続していきたい。また、これだけにとどまらず、常に新しいメニューや楽しいことを提供して、お客さんに喜んでもらえる店であり続けたいですね」と津田さんは展望を話した。
会社データ
社 名 : 株式会社サンドリア札幌
所在地 : 北海道札幌市中央区南8条西9丁目758-14
電 話 : 011-512-5993
HP :https://www.s-sandwich.com
代表者 : 津田哲平 代表取締役社長
設 立 : 2008年
従業員 : 65人
【札幌商工会議所】
※月刊石垣2023年11月号に掲載された記事です。
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