日本商工会議所の小林健会頭は2日、定例の記者会見で、政府の総合経済対策について、「価格転嫁、人手不足、事業再生などへの支援に対する重点方針が明確に示されているこ とを中小企業の立場から評価したい」と述べた。また、10月22日から28日にかけて、フィリピン、マレーシア、シンガポールに派遣した経済ミッションの成果などについて報告。 各国の総合的な印象について、「もはや支援のフェーズではなく、日本が一緒になって、現地に根を張り共に発展していくというフェーズにある」と述べた。
小林会頭はフィリピン、マレーシア、シンガポールの3カ国を訪問した今回の経済ミッションについて、フィリピン・マルコス大統領をはじめ各国要人との会談や現地経済界との意見交換などの活動を報告。各国の総合的な印象について、「以前は日本が支援しながら産業を育成するという図式だったが、今回認識したことは、もはや支援のフェーズではなく、日本が一緒になって、現地に根を張り共に発展していくというフェーズにある」と述べた。 総合経済対策については、「岸田政権のいわば集大成だ」と位置付け、特に中小企業の観点から、「来年の持続的な賃上げに向けた環境整備、人手不足に対する省人化の支援、生産性向上、供給力強化に向けた国内投資拡大など、いわゆる潜在成長率を底上げする対策が多く打ち出されている」と評価。「価格転嫁、人手不足、事業再生などが中小企業の支援として重点になるが、それらを支援する方針が明確に示されていることを中小企業の立場から評価したい」と強調した。特に、事業承継税制の特例措置の延長について、特例承継計画の提出期限の延長が明記されたことに触れ、「画期的なことであり、大いに評価したい」と述べた。
政府・与野党内で検討されている所得税・住民税の減税については、「そういった対策は早い方が良い」と述べ、「減税は、税制調査会や国会を通す必要がある。そのため、すぐに対応でき、低所得者層には先行して行われる給付金から始めるということだろう」と理解を示した。一方、高額所得者については、「扱いは別にしても良いのではないか」と指摘。「(所得額によって、受け取る定額減税や給付金の)重要度が全然違うし、差をつけていくのが良いのではないか」との考えを述べた。
2024年度の賃上げについては、労務費増加分の価格転嫁が十分に行われていないことに触れ、「労働の価値を適正に見直していくべきだ」と指摘。「来年度の労使交渉に向けて、全面的にバックアップしていきたい」との考えを示すとともに、「大企業にはもっと中小企業の声を聞いてほしい」と呼び掛けた。 円安と中小企業への影響については、輸出や、国内における原材料費の値上がりにもたらす為替の影響の大きさを指摘した一方、「大企業では、為替差益が随分出ており、非常に大きな不労所得と言ってもいい。その一部は中小企業へ還元してほしいというのが正直なところだ」との考えを述べた。