日本商工会議所の小林健会頭は11月15日、首相官邸で行われた政労使の意見交換に出席し、労務費の価格転嫁が進まない中でも賃上げ要請に応えている中小企業の苦しい現状などに触れ、「パートナーシップ構築宣言の実効性確保は不可欠」と述べた。価格転嫁の推進に当たっては、『労務費を、原材料費やエネルギー費用などと明示的に分けて交渉、転嫁できる』ことを浸透させることが肝要」と指摘。岸田文雄首相は、「中小企業が利用しやすいよう賃上げ税制を拡充し、労務費を補填(ほてん)する転嫁の強化に取り組む」と述べ、「中小企業の賃上げを全力でサポートする」との方針を表明した。
会議には、日商の小林会頭のほか、使用者側から経団連の十倉雅和会長、全国中小企業団体中央会の森洋会長、全国商工会連合会の森義久会長、労働者側からは連合の芳野友子会長、政府からは岸田首相のほか、松野博一官房長官、武見敬三厚生労働相らが出席。2024年春季労使交渉に向け、意見交換を行った。
小林会頭は、日商調査で、賃上げ率3%以上とする企業が過半となったことに触れ、「中小企業は苦しい中でも賃上げ要請に応えている」と指摘。また、価格協議に応じてもらえない企業が一定数あることから、「パートナーシップ構築宣言の実効性確保も不可欠」と強調した。
価格転嫁の推進に当たっては、「労務費の転嫁が厳しい」と指摘。政府が労務費の価格転嫁指針を打ち出すことについて、「大きな意義がある」と期待を示した上で、「労務費を、原材料費やエネルギー費用などと明示的に分けて交渉、転嫁できることを浸透させることが肝要だ」と述べた。
外形標準課税の見直しについては、「賃上げするほど税負担が増す税制だ。岸田政権が目指す『持続的な賃上げ』の方針に完全に逆行する」と指摘し、適用拡大に断固反対の姿勢を示した。
岸田首相は「現在、デフレからの完全脱却の千載一遇のチャンスである」と強調し、物価動向を踏まえ、今年を上回る賃上げを経済界に要請。そのために、雇用の7割を占める中小企業の取り組みが重要と述べ、「賃上げ税制の拡充、労務費を補填する転嫁の強化に取り組む」と述べ、「中小企業の賃上げを全力でサポートする」との方針を表明した。
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