日本商工会議所の三村明夫会頭は8月9日、経済産業省の第25回産業構造審議会総会に出席した。同会議では2020年度の経済産業政策における重点項目などについて討議を行った。経済産業省の中小企業政策審議会の会長を務める三村会頭は、最低賃金引き上げの影響など、中小企業を取り巻く環境について意見を述べた。
三村会頭は、最低賃金が、4年連続3%台となる3・1%の引き上げとなったことについて、「これにより、足元約4割だった最低賃金引き上げの直接的な影響を受ける企業がさらに増加し、中小企業の経営や地域経済に及ぼす影響を強く懸念する」とコメント。「重要なことは、中小企業が自発的に賃上げできる環境をいかに整備するかである」と述べ、今年の骨太の方針において、最低賃金引き上げに際して「生産性向上に取り組む中小企業への思い切った支援策」や「労務費上昇分の価格転嫁対策」を講じる旨が記載されていることから、これらの施策の早期具現化を要望した。
特に、取引価格の適正化については、「強く要望したい」と強調。日商の調査では、中小企業の約8割が「コストアップを十分に転嫁できていない」との結果になっていることに触れ、「下請法でカバーされる取引は全体の10%くらいしかないため、これを適正化することはもちろんのこと、より広く、大企業と中小企業の取引価格を含めた取引関係を適正化することが必要」と述べた。また、今年の成長戦略に「個別の産業や企業規模ごとの分析を行い、取引関係の課題を明らかにし、きめ細かな改善を図っていく」旨が記載されていることから、「思い切った対策を講じてほしい」と期待を寄せた。
生産性向上については、「中小・小規模事業者におけるデジタル技術の実装化推進は、いまだ『発火点』には到達していない」と述べ、粘り強い支援を求めた。一方、「発火点」に到達しない最大の理由として、中小・小規模事業者の目線に立ったデジタル技術の実装化を支援する専門人材の不足を挙げた。このため、中小・小規模事業者が自社に適したクラウドサービスを導入できるように、クラウド導入支援人材の育成や、そうした人材と企業をつなぐマッチング機能の強化を要望した。
また、日本全体の生産性底上げに向け、中小企業のデジタル技術の実装化について、大企業のサプライチェーン効率化のためにも、大企業が協力、協働するような取り組みが増えるよう、政府による後押しを要請した。
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